3000人以上の遊女が集結した江戸時代の「吉原」【中編】
江戸の性職業 #039
■江戸最大の観光地「吉原」の最大の目玉は “花魁道中”

図1『契情畸人伝』(式亭三馬著、文化14年) 国会図書館蔵
吉原の妓楼(ぎろう)は通りに面して、張見世(はりみせ)と呼ばれる、格子張りの座敷をもうけていた。
この張見世に遊女が居並び、男たちは格子越しにながめて、相手を決める。
図1で、張見世の光景がわかろう。格子に顔をくっつけるようにして、男たちが中の遊女を品定めしている。
また、図1からも、多くの人が通りを行き交っており、いかに吉原がにぎわっていたかがわかろう。
この張見世こそ、吉原の格式の象徴だった。というのは、岡場所の女郎屋に張見世はなかったからである。
吉原がにぎわっていたのは、女郎買いを目的とする男だけでなく、観光目的の老若男女も多数、訪れたからだった。
たんなる遊廓にとどまらず、吉原は江戸最大の観光地でもあった。
浅草の浅草寺に参詣したあと、足をのばして、浅草寺の裏手に当たる吉原を見物するのは、江戸観光の定番コースになっていた。

図2『ぬしや誰問白藤』(市川三升著、文政11年)、国会図書館蔵
そして、吉原見物の最大の目玉が、花魁(おいらん)道中だった。花魁道中はいわばパレードである。
図2に、仲の町を行く、花魁道中の様子が描かれている。
吉原の遊女を大別して、
花魁(おいらん) 上級遊女
新造(しんぞう) 下級遊女
禿(かぶろ) 遊女見習いの、雑用係の女の子
と称した。
図2で、先頭を行くふたりの女は新造。次に花魁。花魁の左右を歩くのは禿である。
花魁に続く女は、監督係の遣手(やりて)。
背後から花魁に長柄傘を差しかけているのは、若い者である。
また、図2で桜が描かれているのは、ちょうど仲の町に桜が植えられた時季だからである。
とくに、夜桜の下を行く花魁道中は、夢幻の世界のような美しさと評された。
吉原の遊女、なかでも花魁は、江戸の最高級のセックスワーカーだった。
(続く)
[『歴史人』電子版]
歴史人 大人の歴史学び直しシリーズvol.4
永井義男著 「江戸の遊郭」
現代でも地名として残る吉原を中心に、江戸時代の性風俗を紹介。町のラブホテルとして機能した「出合茶屋」や、非合法の風俗として人気を集めた「岡場所」などを現代に換算した料金相場とともに解説する。