実は身近な聖徳太子 〜 古代に瓦屋根文化や楽器や楽譜、歌唱技法を広める
[入門]古墳と文献史学から読み解く!大王・豪族の古代史 #026
古代の渋沢栄一か? 最古の宮大工集団「金剛組」創設
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旧札一万円 アップ柏木宏之所持品 撮影・加工/柏木宏之
厩戸皇子(うまやどのみこ/聖徳太子)が日本の文化文明に大きな功績を残したことはいうまでもありません。今回は聖徳太子が、私たちの現代の生活に身近な部分をピックアップしようと思います。
『唐本御影(とうほんみえい)』と呼ばれる絵像が長らくわが国の高額紙幣に描かれ続けたことで聖徳太子という名が忘れられていないことは、最も身近なことかもしれませんが、現在ではあの絵像を聖徳太子だとする説は根拠を失いつつありますし、お札の肖像もどんどん近代の人物に入れ替わりました。
つまり人物としてのイメージがわからなくなってきましたが、太子が撒いた種は実を結び、進化して私たちの身の回りに文化として残されているのです。
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旧札一万円 柏木宏之所持品 撮影・加工/柏木宏之
厩戸皇子が仏教文化を積極的に取り入れたことで、わが国に瓦屋根文化が定着しました。そして建築技術や建築道具、さらには大工さんという職業も、もとは厩戸皇子にかかわりがあります。
四天王寺を建立するときに招来した技術者が建築技術を大和国の若者に教えて組織されたのが、現在も存在する「金剛組(こんごうぐみ)」という最古の宮大工集団で、今は立派な株式会社です。四天王寺のすぐそばに本社ビルがありますよ。
雅楽を導入したのも厩戸皇子だといわれています。大和の若者に渡来人を師匠にして音曲や舞踊を習わせたのです。楽器や楽譜、歌唱技法や舞踊の始まりです。
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奈良県王寺町観光大使キャラクター雪丸
仏典のテーマから発想された「十七条憲法」
一方、厩戸皇子は仏教文化を広く深く取り入れましたが、宗派を創ったわけではありません。しかしながら主な大宗教の宗祖は、すべての人が聖徳太子を尊崇しています。
なぜかといえば、太子は経典を研究して解説ができるほどに理解したうえで、釈迦の代理のようにわが国に仏教の神髄を広めた最初の人だったからです。
学校で習う「十七条憲法」も仏典のテーマから発想されています。もし機会があれば現代訳の本文を探って読んでみてください。現代の私たちにも理解できる規則や考え方がわかりやすく述べられています。私は現代の政治家や公務員の皆さんには、是非全文を読んでくださいとお勧めしています。
伝説ではとても信じられないような奇跡譚(きせきたん)に彩られている聖徳太子ですが、実際には飛鳥時代初期の革命的な天才政治家だといえるでしょう。
その人柄は、気難しい近寄りがたい人ではなかったようです。母を大切にして、父を尊敬し、家族を愛する人でした。そのうえ、白い毛並みの犬を可愛がったそうです。雪丸という名の愛犬です。愛媛県の道後温泉にも旅行をしています。きっと温泉に浸かって楽しく過ごしたことでしょう。
1400年前に国造りに命を懸けた厩戸皇子、つまり聖徳太子を身近に感じてみてください!