歴史上の人物を四柱推命で鑑定!第92回~メアリー1世~
恐怖の“ブラッディ・メアリ”はどんな人物だったのか?
「偏官」と「比肩」の危険な組みあわせが“異端狩り”へと導いた⁉

メアリー1世の墓があるウエストミンスター寺院。エリザベス1世の墓も同地にある(著者撮影)。
歴史上の人物に迫るには様々なアプローチがあるが、ここでは四柱推命(しちゅうすいめい)という手法を用いて、歴史上の人物がどんな性格であり、なぜ成功したのか(失敗したのか)を読み解く。※四柱推命と用語の説明はページの最後をご覧ください。
久々に世界史に目を向ける。カクテルの名称としても知られる、「ブラッディ・メアリ(血まみれのメアリ)」の異名を持つ、メアリー1世。本当にそれほど恐ろしい人物だったのだろうか。四柱推命で鑑定の結果、バランス感覚に優れ、明るくおおらかな面も見えてきた。
メアリー1世
生年月日: ユリウス暦1516年2月18日(グレゴリオ暦:1516年2月28日)

メアリー1世: ユリウス暦1516年2月18日生まれの命式表
通変星、蔵干通変星からメアリ1世の性格を読み解いていく。通変星、蔵干通変星をわかりやすく円グラフに表すと下記のようになる。

メアリー1世: ユリウス暦1516年2月18日生まれの性格
知性…様々な分野の知識が豊富で、何かを学ぶことに喜びを感じる。頭の回転が速く、物事を論理的に捉えることが上手
行動力…頭で考えるよりも行動で結果を出す。未知の分野に挑戦する意欲が強く、交渉力や営業力を磨けば成功できる
人脈…さりげない気配りができて誰とでも仲良くなれる。サービス精神が旺盛でコミュニケーション能力も高く人を動かせる。
自立心…他人に依存することなく、自分が信じた道を突き進む強い精神性。リーダーシップを発揮しフリーで活躍できる。
遊び心…楽しいことを企画する等、生活に遊びを取り入れることが自然とできる。芸術面の才能があり、表現力が豊富。
○超バランス型人間!
通変星には「知性」「行動力」「人脈」「自立心」「遊び心」の5種類の星があるが、多くの星を持っているほど、性格のバランスがよいと判断される。この全ての星を持っているメアリーは、五徳(ごとく)と呼ばれ、バランス感覚に優れ一人で何でもできるスーパーマンと言える。
これまで筆者は約100名の歴史上の人物を鑑定してきたが、「五徳」の人物に出会うのはこれで3人目だ。1人は渋沢栄一。500もの会社設立に携わり実業家として大成功を収めた。2人目は豊臣秀吉。宣教師・ルイスフロイスの「日本史」に、「抜け目なき策略家」と書かれているように、そのバランス感覚を上手に生かし、織田信長のもとで大出世、最終的に天下人に上りつめた。メアリーはそんな彼らと同じくらいバランス感覚がいいと考えられるが、メアリーにそのイメージはない。
メアリーはヘンリ8世の長女として生まれ、紆余曲折の後、1553年から5年間在位した。しかし、メアリーの治世はすこぶる評判が悪い。教会のプロテスタント化を進めてきた聖職者を弾圧し、ついたあだ名はブラッディ・メアリ…。さらに、スペインの皇太子フェリペ(後のフェリペ2世)と結婚した結果、スペインの戦争に巻き込まれ、大陸最後の拠点、カレーを失った。このように、イングランド国民、とりわけプロテスタントの人々にとって悲劇が続いたことで、後世で悪く語り継がれたのだろう。しかし、この四柱推命鑑定の結果から、ただ感情的に動くタイプではなく、知性と理性と強い信念を持った女性なのかもしれないと思う。
○攻撃的!DV気質⁉
メアリーは命式表に「偏官(へんかん)」と「比肩(ひけん)」の組み合わせを持っている。どちらも強い星だが、危険な組み合わせで、怒りやストレスをためすぎるとDVになる可能性もある。1度爆発すると手が付けられないイメージだろうか。
メアリーには、異母兄弟のエリザベス(後のエリザベス1世)がいたが、エリザベスの母、アン・ブーリンはメアリーの母、キャサリンからヘンリ8世の后の座を奪い取った経緯があり、姉妹とはいえ、エリザベスを好まなかった。
メアリーは、スペイン出身の母・キャサリンの影響で熱心なカトリック信者であった。即位後、メアリーが国教会をカトリックに戻し、フェリペとの結婚を宣言すると、プロテスタントを中心に反乱の狼煙(のろし)が上がった。メアリーはエリザベスがこれに加担していると確信し、ロンドン塔に幽閉した。エリザベスは死をも覚悟したという。最終的に妹を処刑するだけの証拠を集められなかったが、アン・ブーリンや、やりたい放題の父・ヘンリ8世への怒りが積もり積もった結果の振る舞いだろう。
さらに、夫・フェリペが止めに入ったにも関わらず、メアリーの命令で、異端狩りの嵐が吹き荒れ、カトリックへの改宗を拒んだ、300人近くもの国民が火刑に処せられた。一旦爆発すると手が付けられない…。そんな性格が表れたのだろうか。

エリザベスが幽閉されたロンドン塔(著者撮影)。現在は儀礼の際に使用する武器の保管庫、礼拝所などとして使用されている。
○恋愛体質!恋する乙女!?
メアリーは命式表に「偏官(へんかん)」を持っているが、「偏官」は女性にとって恋愛の星。メアリーは安定的な結婚を求めるより、恋愛を楽しむ乙女チックな性格だった可能性がある。それも、命式表の中で1番大事な、主星(しゅせい=月柱の蔵干通変星)に持っていることから、かなりの恋愛体質だったと言えそうだ。
メアリーは38歳で処女だった。そんなメアリーにフェリペとの結婚話を持ってきたのは神聖ローマ皇帝カール5世(カルロス1世)の意を受けたスペイン大使・ルナールだった。ルナールはメアリーに接触し、フェリペの肖像をみせた。メアリーはフェリペの美貌にのぼせ上がったという逸話が残る。スペインの王女となることで自身のカトリック信仰が満たされると考え、結婚を誓約したと言われるが、もしかしたら単に恋心だったのかもしれない。
なお、2人がともに過ごしたのは、たったの2度。短期間をともに過ごしただけで、あまり夫婦関係もよくなかったものと思われる。恋に恋する乙女、メアリーには、受け入れがたい現実だったろう。
○一匹狼!強い信念の持ち主!
メアリーは命式表に「比肩(ひけん)」を持っている。これは自立心の星だが、職人気質で一匹狼、頑固に自分を突き通す一面を持つ。しかも、メアリーは比肩を、命式表の中で2番目に大事な、自星(じせい=日柱の蔵干通変星)に持っている。
一度決めたら何としても押し通したい、頑固な性格の持ち主だったのだろう。フェリペとの結婚に際し、カトリック化とスペイン化を恐れ、多くの宮廷の貴族が反対した。しかし、これを押し通した。また、夫・フェリペが反対するにも関わらず、プロテスタントの改革派の人物を次々と処刑した。
1558年11月、メアリーは卵巣癌のために亡くなった。メアリーは側近にこう告げた。「私が死んだら胸を切り開いてください。カレーという文字が刻まれているでしょう」と。カレーに対する思い、イングランドに対する思いから、強い信念の持ち主だったと想像することができる。
○おおらかで子どものような性格!
ブラッディ・メアリの異名を持つメアリーだが、命式表の中には、明るくおおらかで子供っぽいという意味の「食神(しょくじん)」を持っており、もしかしたらプライベートではそんな面も見られたのかもしれない。あるいは、国王として無邪気な性格を押し殺して生活したのだろうか…。
メアリーが、そこまでカトリックに傾倒した理由はなんだろう。もしかたら、父・ヘンリ8世に対する、コンプレックスだろうか。ヘンリ8世は6回も結婚し、奔放な生活を送った。最初の妻が、メアリーの母、キャサリンだ。しかし、エリザベスの母、アン・ブーリンに心変わりをし、キャサリンとの離婚を進めようとする。本来カトリックならば、ローマ教会の承認なしに離婚は成立しない。実際にローマ教会はキャサリン王妃との離婚を認めなかった。そこで、ヘンリ8世は国王至上法を発布。自らイングランド国教会の首長となり、無理やりキャサリンと離婚した。メアリーも王女の称号を剥奪され、非嫡子となり、エリザベスの侍女にさせられた。母・キャサリンと会うことを禁じられ、父との接触も制限された。継母のアン・ブーリンにも虐められたようだ。
そんな波乱万丈な子ども時代を送った、メアリー。父・ヘンリ8世に嫌悪感を抱き、また離婚のない幸せな家族生活を夢見てカトリックに執着したのだろうか。悪い噂の絶えないメアリーだが、メアリーの気持ちを思うと、心が痛む。
【参考文献】
・「イギリス王室1000年史」 石井美樹子 新人物往来社 2011年
・「きちんと理解するイギリスの歴史」内藤博文 河出書房新社 2019年
・メアリ1世 世界史の窓HP https://www.y-history.net/appendix/wh0903-054.html(2021年1月19日最終アクセス)
・「図録・テューダー朝の歴史」水井万里子 河出書房新社 2011年
■四柱推命とは?
古代中国で生まれた「過去、現在、未来」を予見する運命学のひとつで、陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)をもとに、人が生まれながらにして持っている性格、能力、素質を理解し、その人の努力や経験で変わる後天的な運命までも予測することができる。
具体的には、生まれた日(生まれた年・月・日・時間)をもとに命式表(めいしきひょう)を作成し占っていく。なお、ここでは生まれた時間は鑑定に含めていない。