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映画「インディ・ジョーンズ」の探検は考古学調査と呼べるのか? ~正式な考古学調査と宝探しの境界線

[入門]古墳と文献史学から読み解く!大王・豪族の古代史 #017

遺跡調査には幾重もの調査・検討が必要

キトラ古墳模型/柏木宏之撮影

 私は映画「インディ・ジョーンズ」のシリーズが大好きです。ハリソン・フォード演じる考古学者のジョーンズ博士が、謎の古代遺跡の調査をする冒険物語で、お父さん役を先日亡くなったショーン・コネリーが演じていて、とても面白い映画だったと思います。

 

 しかしながら、ジョーンズ博士の遺跡探検が考古学調査といえるのかどうか?について、ある時から気になっています。

 

 作中では、人が入ったことのない謎の遺跡の入り口は、暗号や謎を解かないと開きません。博士は見事に謎を解いて巨大な石扉を開いて中へ入っていきます。

 

 まずここでダメ出し!

 

 現代の考古学調査では、遺跡を発見したらまずその外観や入り口の構造を測量調査して図面を作ります。もちろん細部にいたる調査で、写真もしっかり撮っておきます。

 

 そして中がどうなっているのかをさまざまな機器で非破壊調査をします。どこかに小さな穴や隙間でもあれば胃カメラのようなファイバースコープを入れて中の様子を撮影します。そして調査団は、今後の調査の方針と綿密な計画を立てるのです。

 

 長く密閉されていた遺跡の内部に太陽光や外気が流れ込むと一気に劣化する恐れがありますし、古代の細菌や未知のウイルスがいたり、酸欠空気が満ちていたりするかもしれませんからね。

 

 慎重に慎重に調査と検討を重ねて、扉や周りの遺構に傷をつけないようにしっかり養生をして、やっと扉を開きます。遺跡に入るだけでもジョーンズ博士のようにはいきませんね。

整備されたキトラ古墳墳丘/柏木宏之撮影

 そのうえ、遺跡から物を持ち出す時には、さらに厳格な調査と図面、写真撮影が大切です。

 

 発見した時と全く同じように、同じ場所に、同じ向きで同じ角度で副葬品などを戻すことができるようにするのです。こういった調査の仕方を「可逆性をもった調査」といいます。

 

 もちろん検出された遺物を、たとえ欠片(かけら)といえども私物化することはできません。

 

 ジョーンズ博士は発見した目的の物をバッグに突っ込んで遺跡から脱出しますが、これでは単なる宝探し、もっと悪くいえば墓泥棒と同じです。トレジャーハンターといって、今でも海底や地中にあるといわれているお宝探しをしている人が世界中にいますが、考古学者にとってはとても迷惑な行為だといえるでしょう。

 

 高松塚古墳もキトラ古墳も、住民の方の通報で学術調査が行われ大発見につながっています。残念ながら盗掘はされていますが、あの極彩色の壁画や天文図が発見されて保存されることになったのです。

 

 古墳や遺跡の調査は信じられないぐらいの慎重さと細かい配慮でなされます。

 

 なぜなら、遺跡を構成する遺構のどこからどんなふうに出土した遺物なのかがわからないと、とても貴重な遺物でも、その存在意義が大きく低下してしまうことがあるからです。

再現整備された高松塚古墳/柏木宏之撮影

(次回に続く)

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柏木 宏之(かしわぎ ひろゆき)
柏木 宏之かしわぎ ひろゆき

1958年生まれ。関西外国語大学スペイン語学科卒業。1983年から現在も毎日放送アナウンサー、ニュース、演芸、バラエティ、情報、ワイドショー、ラジオパーソナリティ、歴史番組を数多く担当。現在、アナウンサーを続けながら武庫川学院文学部非常勤講師、社会人歴史研究会「まほろば総研」を主宰。奈良大学通信教育部文化財歴史学科卒業学芸員資格取得。専門分野は古代史。奈良大学卒論は「日本列島における時刻の掌握と報知の変遷」

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