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「台湾有事」まで秒読み段階? 米国の「ドンロー主義」で東アジアの均衡は崩されるか


  

 トランプ政権が「ドンロー主義」を掲げてベネズエラへの電撃的な軍事介入を敢行したことは、国際秩序の土台を根底から揺さぶる歴史的な転換点となった。米国が自らの「裏庭」とみなす西半球において、武力による政権交代をも厭わない強硬姿勢を鮮明にしたことは、かつてのモンロー主義の再来であると同時に、世界の勢力圏を明確に分割しようとする極めて危険なシグナルを同盟国およびライバル諸国に送っている。特に、この米国の行動を注視しているのが中国であることは疑いようがない。

 

 中国は今後、米国のベネズエラ介入を逆手に取り、極めて狡猾な外交攻勢を展開するだろう。彼らの主張は明白である。「米国が西半球における独占的な覇権と内政干渉の権利を主張するのであれば、中国もまた自国の周辺地域、すなわち東アジアにおいて同様の権利を有する」という論理だ。中国は、米国が西半球の安定と権益に専念する見返りとして、西半球の外、特に台湾問題を含む中国の「核心的利益」に対する米国の関与を回避すべきだという、大胆な勢力圏の棲み分けを提案する可能性が高い。

 

 この外交戦略において、中国はトランプ政権が好む経済的な「ディール」を持ちかけるはずである。対米貿易黒字の削減やエネルギー資源の購入、あるいは米国企業に対する市場開放などを取引材料に、台湾情勢からの米軍の後退や武器売却の停止を執拗に要求するだろう。トランプ政権が「アメリカ・ファースト」の名の下に、遠方の民主主義の防衛よりも国内経済や隣接地域の利権を優先すると判断すれば、米中間の密約によって台湾が孤立するシナリオは現実味を帯びてくる。

 

 米国の関与が希薄化し、国際的な抑止力が形骸化した隙を突く形で、中国による台湾侵攻はもはや予測可能な未来へと変貌する。ベネズエラで見せつけられた「力による解決」という前例は、中国国内の強硬派を勢いづかせ、長年の悲願である台湾統一を軍事的に達成する絶好の好機と捉えさせるだろう。西半球の覇権に固執する米国の「ドンロー主義」は、結果として東アジアの軍事的均衡を破壊し、台湾有事という激震を世界にもたらす引き金となりかねない。

写真AC

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プロバンスぷろばんす

これまで世界50カ国ほどを訪問、政治や経済について分析記事を執筆する。特に米国や欧州の政治経済に詳しく、現地情報なども交えて執筆、講演などを行う。

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