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渡船をボタンで召喚!? 海を隔てた2つの叶神社をショートカットで訪ねてみる

神社仏閣好きラノベ作家 森田季節の推し寺社ぶらり【第40回】


■船を使って神社巡り!?

 

 神奈川県横須賀市の浦賀地区に近いようで遠く、遠いようで近い、2つの神社があります。これだけだと意味不明だと思いますが、現地に行っていただければこの言葉が正しいとわかります。

 

 まずは京急に乗って浦賀駅で降りてみましょう。浦賀駅を出ると南へ向かう大きめの道路が2本あります。これは浦賀駅の南側が逆V字の湾になっているためです。記号で示せば ∧ ですね。∧の真ん中が海だとお考えください。

 

 当然、湾の東側の港に行けば、西側の港から離れてしまいます。その逆もしかり。道路を使って東側と西側を移動しようとすれば、一度浦賀駅付近の結節点のところまで行って回り込む必要があります。そして、東西の港にそれぞれ叶(かのう)神社があるのです。名前もそのまんまで、東叶神社、西叶神社です。

 

海と鳥居のコントラストが美しい東叶神社。

 まずは東叶神社に参拝しましょう。海のすぐそばに鳥居があり、写真映えします。ここから湾を隔てた対岸に西叶神社があります。もし車で来た場合は、ぐるっと大回りするしか方法はありません。ためしにグーグルマップで両方の神社を設定したところ、車だと3キロほどの距離になりました。徒歩だと、車の経路検索では表示されない狭い道も使えるので、もう少し距離は縮むかもしれませんが、それでも気楽に回れる距離ではありません。

 

 ですが、徒歩で経路を設定したところ、わずか700メートル、9分で到着と表示されます。どういうことでしょうか?

 

渡船「愛宕丸」。営業時間は朝7時から夕方5時まで。

 タイトルにも書いているのですでにネタバレしているかもしれませんが、答えは船を使ってショートカットしているからです。東叶神社から北に300メートル弱のところに浦賀の渡船(わたしぶね)の乗り場があります。船がこちら側の岸にない場合はブザーを押すと、対岸からやってきます。現地を訪問した時もブザーを押して、周囲の写真などを撮っていたら気づいたら船が来ていました。乗ったと思ったら、すぐに西叶神社側の乗り場に到着します。湾の間の距離をおおざっぱに計測するとせいぜい300メートルほどでした。西の乗り場から西叶神社までは150メートル。すぐに着きます。

 

西叶神社の社殿

 西叶神社は境内は平坦地が少ないという制約もあって狭いものの、江戸時代後期の建築である社殿が立派で、社殿を見上げたところにある龍の格天井も大変かっこいいです。また、石の玉垣には狛犬がかくれんぼでもするように作られていて、本当にかわいいです。江戸時代、浦賀の商人が相当なお金を出して神社を整備したことがわかります。東叶神社のほうは奥のほうまで上っていくと、まるで山岳寺院のような雰囲気もあるので、同じ叶神社でもそれぞれ趣が異なっているのも面白いです。

 

 東京や横浜近辺にお住まいの方、少し時間ができた時に船に乗って神社巡りしてみませんか?

 

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森田季節もりたきせつ

1984 年生まれ、兵庫県出身。作家。東北芸術工科大学特別講師。京都大学文学部卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程中退(日本史学専修)。大学院在学中の2008年、『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』で第4回MF文庫Jライトノベル新人賞優秀賞を受賞してデビュー。主な著書に『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』(GAノベル)、『物理的に孤立している俺の高校生活』(ガガガ文庫)、『ウタカイ 異能短歌遊戯』(ハヤカワ文庫)などがある。

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