グローバルサウスから見たトランプ大統領 「アメリカ・ファースト」に対する世界の評価は?
トランプ・ハリスの選挙戦から1年が経過し、第二次トランプ政権が発足してから10ヶ月となるが、トランプ政権にとってグローバルサウスの優先順位は高くない。グローバルサウスと呼ばれる新興国や開発途上国の多くは、トランプ大統領に対し、複雑で二面的な感情を抱いている。彼の「アメリカ・ファースト」の姿勢は、従来の米国の国際協調主義からの離脱を意味し、これが彼らの世界観や国益と絡み合い、評価が分かれる要因となっている。
グローバルサウス諸国がトランプ氏に抱く感情の一つは、西側諸国中心の国際秩序に対する「反発」や「異議申し立て」の代弁者という側面である。かつて植民地支配や冷戦後の西側主導の価値観の押し付けを経験したこれらの国々にとって、トランプ氏の国際機関軽視や「アメリカ・ファースト」の姿勢は、多極化の進展を促し、自分たちの発言権を強めるチャンスと捉えられることがある。
特に、彼らは西側諸国が主張する「民主主義」「人権」といった普遍的価値や、ロシア・ウクライナ紛争、ガザ侵攻における西側の「二重基準」に対する不満を共有している。トランプ氏がこれらの価値観を強く押し付けない姿勢は、内政干渉を嫌う一部の国々、特に権威主義的な傾向を持つ指導者たちにとっては、自国の主権尊重につながるものとして歓迎される。彼らは、トランプ氏のもとで米国が「世界の警察官」としての役割を縮小させることが、かえって自国の戦略的自立を高めると見ているのだ。
一方で、トランプ氏の政策は、グローバルサウス諸国に大きな不安と懸念ももたらす。最も大きな懸念は、彼の掲げる保護主義的な貿易政策である。関税の導入や既存の貿易協定の見直しは、国際市場への依存度が高いグローバルサウス諸国の経済成長に直接的な悪影響を及ぼす可能性がある。特に、米国市場への輸出に頼る国々にとって、貿易障壁の高まりは深刻な問題となる。
また、トランプ氏がもたらす国際政治の不安定性も無視できない。同盟国や国際機関との関係を軽視する彼の姿勢は、外交の予測可能性を低下させ、地政学的リスクを高める。ウクライナ紛争やイスラエル・パレスチナ問題など、重要な国際紛争に対する彼の立場が明確でない、あるいは急変する可能性があることは、これらの地域の安定を重視するグローバルサウス諸国にとって、非常に懸念される点である。
さらに、グローバルサウス諸国のトランプ氏への見方は、米中間の戦略的競争という文脈で大きく左右される。トランプ政権下で米中対立がさらに激化すれば、グローバルサウス諸国は、どちらか一方を選ぶことを強く迫られるジレンマに陥る。しかし、トランプ氏の「アメリカ・ファースト」による米国との関係の冷え込みは、結果として中国のグローバルサウスに対する求心力を高める可能性を秘めている。一帯一路構想などを通じて経済的な結びつきを強めてきた国々にとって、米国が国際的な関与を弱めることは、中国との関係強化を加速させる一因となり得る。このため、トランプ氏の再登場は、グローバルサウスをめぐる国際政治の力学を、さらに中国有利に傾ける要因として捉えられている。
結論として、グローバルサウスのトランプ氏に対する認識は、従来の西側秩序への不満と多極化への期待がある一方で、経済的な保護主義と国際的な不安定化への深い懸念が混在しており、各国・地域によってその評価は大きく異なっているのが実情である。

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