世界を震撼させたイスラエルとイランの軍事衝突 トランプ政権下での中東情勢と日本のエネルギー安全保障への影響
6月13日、イスラエルがイランに対して軍事攻撃を仕掛けたことを契機に、両国間の緊張が急速に高まっている。この攻撃は、イランの核開発計画や地域での影響力拡大を牽制する目的で行われたとみられるが、具体的な攻撃の詳細や規模については依然として情報が錯綜している。イランは即座に報復を宣言し、イスラエル領内へのミサイル攻撃やドローン攻撃を敢行。これにより、中東地域全体が不安定化し、国際社会は新たな紛争の火種に警戒を強めている。
■イスラエルとイランの対立の根源
イスラエルとイランの対立は、歴史的・宗教的背景に加え、現代の中東における覇権争いに起因する。イスラエルは、イランの核開発が自国の安全保障に対する直接的な脅威であると主張し、米国や一部の湾岸諸国と連携してイランへの圧力を強めてきた。一方、イランはイスラエルの攻撃を非難し、シーア派の同盟国であるシリアやレバノンのヒズボラを通じて対抗してきた。今回の軍事衝突は、これまでの代理戦争から直接的な軍事対決へとエスカレートした象徴的な出来事である。
■トランプ政権のイスラエル支持とその影響
ドナルド・トランプ米大統領は、2025年1月の第47代大統領就任以降、イスラエルへの強固な支持を再確認している。前政権下でもエルサレムの首都認定やアブラハム合意の推進など、イスラエル寄りの政策を展開したトランプ氏は、今回の衝突でもイスラエルを全面的に支持する姿勢を鮮明にしている。米国はイスラエルへの軍事支援を強化し、最新の防空システムや武器供与を加速させている。
しかし、この強硬な姿勢はイランの反発を一層強めている。イランは、米国がイスラエルの攻撃を黙認し、さらには支援していると非難。報復として、バーレーンやアラブ首長国連邦(UAE)など、ペルシャ湾岸地域に駐留する米軍基地を標的にする可能性が指摘されている。これらの基地は、米国の地域戦略の要であり、攻撃を受けた場合、中東全体の軍事バランスが崩れる恐れがある。
■ホルムズ海峡封鎖のリスク
イランが報復の一環としてホルムズ海峡の封鎖に踏み切るシナリオは、最悪の展開として国際社会の懸念を集めている。ホルムズ海峡は、ペルシャ湾からインド洋へとつながる世界のエネルギー供給の要衝であり、原油や液化天然ガス(LNG)の約20%がこの海峡を通じて輸送されている。イランは過去にも、制裁や軍事的圧力への対抗措置として海峡封鎖をちらつかせてきたが、実際に封鎖が実行されれば、グローバルなエネルギー市場に壊滅的な打撃を与える。
特に日本にとって、ホルムズ海峡の封鎖はエネルギー安全保障に深刻な影響を及ぼす。日本はエネルギー資源の約9割を輸入に依存し、その多くが中東産の原油やLNGである。2024年のデータによると、日本の原油輸入の約80%がサウジアラビア、UAE、カタールなどペルシャ湾岸諸国からのもので、これらの輸送ルートはホルムズ海峡を通る。封鎖が長期化すれば、原油価格の高騰は避けられず、国内のエネルギーコスト上昇や経済全体への波及効果が懸念される。
■日本のエネルギー安全保障への影響
日本はエネルギー安全保障を確保するため、多角的な対策を講じてきた。石油備蓄や再生可能エネルギーの推進、さらにはロシアやオーストラリアからのLNG輸入拡大などがその一例である。しかし、ホルムズ海峡の封鎖は、これらの対策を一時的に無力化する可能性がある。短期的な備蓄では数カ月の需要を賄えるものの、長期的な供給途絶は産業活動や国民生活に深刻な影響を及ぼすだろう。

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