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南無念彼観音力! 2度にわたる大地震をも乗り越えた パワーストーン「奇岩 落ちない石」 岩角山岩角寺/福島県本宮市

神社仏閣好きラノベ作家 森田季節の推し寺社ぶらり【第25回】

 


津々浦々の神社・仏閣を訪ね歩くことを趣味にしているライトノベル作家の森田季節さん。全国に約16万もあるという神社・仏閣の中から、知見を生かしたマニアックな視点で神社・仏閣を紹介! あなたをめくるめく寺社探訪の旅に招待します。興味を持った方はぜひ現地に訪れてみよう。


 

2度の大地震に耐えた落ちない石

■巡礼と巨石めぐりを同時に

 

 境内に巨石がある寺社はいくつもありますし、過去にも紹介したところがありますが、今回紹介するのは境内で巨石めぐりができる寺院です。

 

 福島県の本宮駅から郊外に向かってタクシーで移動すると、岩角山(いわつのさん)が見えてきます。お寺の名前は岩角寺(がんかくじ)といいますが、岩角山のほうが通りがいいです。こちら、境内の奥(というより上)が花崗岩の巨石だらけなのですが、そんな巨石を縫うような巡拝ルートが設置されています。巨石の中には仏像が線刻されたものも多く、巡礼と巨石めぐりが同時に行えます。境内には那智堂などもあるので、おそらく東北でも盛んだった熊野信仰とも関わりのある霊場だったのでしょう。修験道の霊場によくある胎内くぐりの巨石のトンネルもあります。

如意輪観世音が彫られた巨岩。西国三十三観音すべての尊像が線刻されている

 距離はそこまでではないものの、アップダウンが激しく、岩のすぐそばを縫うように進んだり、あるいは岩の間を潜り込むような箇所も多いので、なかなか疲れます。とくに参詣時は小雨で岩が濡れてる箇所もあったので気をつかいました。ただ、巡拝というのは行楽ではなくて修行なので、そういう意味では正しい形なのかもしれません。転倒したりしないように注意して、巨石だらけの境内を一周しました。

 

 とくに「落ちない石」と命名されているバランスの悪い石はお寺でもフィーチャーされていました。いや、落ちそうで落ちないのでむしろバランスはいいのか……? 岩を見ながらじわじわ高度を上げていって奥の院の阿弥陀堂にたどり着くと、そこには神社建築の様式のお堂――というか事実上の社殿がありました。社殿の真裏には本来の信仰対象らしいひときわ大きい巨石が鎮座しています。神仏習合の霊場で巨石を見るとテンションが上がるのは人間の本能です。断定するのは言いすぎかもしれませんが……これぞ本来の信仰の形という気がします。

岩の中に吸い込まれそう

 わざわざタクシーを使ってまで行くのでは交通費がかかりすぎると思われるかもしれません。ただ、公共交通機関がないことを自治体も懸念してか、タクシーを格安で使える制度を導入しています。自分が使ったケースでは、本宮駅から岩角山に行く料金が片道500円になりました。おかげで効率よく観光ができました(制度が変更されたり廃止されることもあるので使用前に自治体のページなどをご覧ください)。

 

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森田季節もりたきせつ

1984 年生まれ、兵庫県出身。作家。東北芸術工科大学特別講師。京都大学文学部卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程中退(日本史学専修)。大学院在学中の2008年、『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』で第4回MF文庫Jライトノベル新人賞優秀賞を受賞してデビュー。主な著書に『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』(GAノベル)、『物理的に孤立している俺の高校生活』(ガガガ文庫)、『ウタカイ 異能短歌遊戯』(ハヤカワ文庫)などがある。

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