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まるで飛行機のような鳥居との衝撃的な出会い 八幡宮/京都府綾部市

神社仏閣好きラノベ作家 森田季節の推し寺社ぶらり【第21回】

 


津々浦々の神社・仏閣を訪ね歩くことを趣味にしているライトノベル作家の森田季節さん。全国に約16万もあるという神社・仏閣の中から、知見を生かしたマニアックな視点で神社・仏閣を紹介! あなたをめくるめく寺社探訪の旅に招待します。興味を持った方はぜひ現地に訪れてみよう。


 

鳥居に社がくっついているような珍しい扁額。撮影:森田季節

■想像のはるか上をいく衝撃的な出会い

 

 京都府北部でおそらく唯一の国宝建造物、光明寺仁王門を友人の車に乗せてもらって訪問した帰り、せっかくの機会なので車がなければなかなかアクセスできない綾部市の郊外も巡りました。こういう場合、文化財指定をされている建造物の寺社を中心に候補を決めるのですが、綾部市八津合町西屋(やつあいちょうにしや )の八幡宮もその過程で選びました。この時点で「江戸時代後期の、彫物が美麗な神社本殿があるんだろうな」ぐらいに考えていました。鳥居も文化財と書いてあったのですが、そちらは完全に意識の外にありました。神社本殿に関してはそこまで間違ってなかったのですが、現地に到着したところ、はるかに衝撃的なものに出会いました。

このかっこよさが伝わるでしょうか。正面の姿もいいが、角度をつけるとより飛翔感がある八幡宮の鳥居。撮影:森田季節

 今にも地上から飛び立っていきそうな派手な鳥居です! 鳥居のジャンルとしてはいわゆる両部鳥居(りょうぶとりい)というメインの2本の柱を小さな柱で前後に挟んで連結したもので、神仏習合色が強かった神社などに多い形式です。八幡神といえば、史料に現れて間もない時代から八幡大菩薩と呼ばれるぐらいに神仏習合色の強い神様ですから、そういう意味では妥当なところにある鳥居と言えます。笠木(鳥居の一番上の横の木)が反り返っているのもこの手の鳥居には多い様式なので、この鳥居だけが特殊なわけではないはずです。

 

 とはいえ、ここまで見事に飛翔しそうな両部鳥居は見たことがないです。両部鳥居で有名なものといえば、広島県廿日市市の厳島神社、福井県敦賀市の氣比神宮などが挙げられますが、飛びそうと思ったことはないです。この八幡宮の鳥居は幕末のものですが、芸術的な格好よさがあります。鳥居にかかった扁額を覆う箱型の部分もなかなか面白いです。

巨大な扁額が目を引く壹鞍神社の鳥居。こちらも「飛ぶぞ」という気合に満ち溢れた造形をしてる。撮影:森田季節

 近くの壹鞍(いちくら)神社の両部鳥居もまた衝撃的です。こちらの特徴は扁額が大きすぎること! その扁額の覆いも含めて自分が鳥居の主役だぞと主張してるようです。これを目にして、よくある風景で流してしまうことはできないでしょう。足を止めて参拝しました。

 

 そのほか、かやぶきの山里として有名で、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている南丹市美山町の集落も近くにあります。観光客だらけの中心部とはまた違う空気の京都を体感されてみてはいかがでしょうか?

 

 

 

 

 

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過去記事

森田季節もりたきせつ

1984 年生まれ、兵庫県出身。作家。東北芸術工科大学特別講師。京都大学文学部卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程中退(日本史学専修)。大学院在学中の2008年、『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』で第4回MF文庫Jライトノベル新人賞優秀賞を受賞してデビュー。主な著書に『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』(GAノベル)、『物理的に孤立している俺の高校生活』(ガガガ文庫)、『ウタカイ 異能短歌遊戯』(ハヤカワ文庫)などがある。

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