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バブル期にしか建立できない! 大都会からバス一本で行ける巨大仏像は、外観より内部が絶景だった 仙台大観音/宮城県仙台市

神社仏閣好きラノベ作家 森田季節の推し寺社ぶらり【第19回】

 


津々浦々の神社・仏閣を訪ね歩くことを趣味にしているライトノベル作家の森田季節さん。全国に約16万もあるという神社・仏閣の中から、知見を生かしたマニアックな視点で神社・仏閣を紹介! あなたをめくるめく寺社探訪の旅に招待します。興味を持った方はぜひ現地に訪れてみよう。


 

曇り空がかえって存在感を際立たせる仙台大観音。撮影:森田季節

■仙台大観音の内部こそが絶景!

 

 バブルの前後、日本の各地に巨大仏像が造立されました。淡路島の世界平和大観音像のように老朽化により解体されてしまったケースもありますが、やはり仏様の姿をしているものだからか、一般的なビルと比べれば紆余曲折ありながらも存続しているケースも多いです。

 

 こういった巨大仏像が法隆寺や東大寺のような本格派の観光寺院と比べればどうしてもB級スポット扱いされがちなのは事実です。しかし、いざ現地に行ってみると十二分に楽しめるところが少なくありません。とくに牛久大仏なんかは一大観光施設と言っていいでしょう。

 

 そんな巨大仏像は物理的に場所をとるという理由もあって、大半が郊外にあります。新宿駅前のようなビル街に巨大仏像がそびえていたら、もはやゴジラですからね。なので、都市部から気楽に行くには遠すぎるので選択肢から消えがちです。

 

 ですが、東北の大都会の仙台駅からバス一本で行ける巨大仏像があります! 仙台の巨大な観音、仙台大観音です! なお寺院の正式名称は大観密寺(だいかんみつじ)と言うそうですが、おそらく仙台市内でも通じないと思うので、通りのよい仙台大観音のほうで表記します。

 

 仙台駅から約30分バスに乗って北の住宅地に向かうと、目的の観音に着きます。高さ100メートルの文句なしの巨大仏像です。周囲はおそらく全盛期ほどの活気はなくなってるようですが、今でも観音像の内部は現役で、拝観料を払って見学できます。

 

 エレベーターでまず上のフロアに上がります。観音像から外を展望することもできます。仏像が100メートルあるのでなかなかの絶景ですが、実はそれ以上の絶景が内部にあります。

 

まさに絶景! きらめく大観音内部の螺旋状の階段、おびただしい仏像たちなど。撮影:森田季節

 この観音像、内部は外壁にへばりつくような形で階段がらせん状に続いています。そして、踊り場的な各フロアに仏様が安置されている構造になっています。これを高いフロアから見下ろすと、そこには強烈に近未来的な光景が! 抽象的でわかりづらいですが、たとえられるものが思いつかない独特の空間です。僕の写真が下手なので、いまいち伝わらないのですが……。ぜひ《仙台大観音 内部》でイメージ検索してみてください。この景観を見るためだけに寄ってもいいぐらい変わった景色です。

 

 利便性や実用性だけを考えれば、100メートルの建物を作って内部を吹き抜けになんてできないでしょう。良くも悪くも、お金に余裕があって無駄を許容できたバブルの時代の影響があったればこそ生まれた建築と景観がこの仙台大観音です。仕事で仙台に寄ったついでにどうでしょうか?

 

 

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森田季節もりたきせつ

1984 年生まれ、兵庫県出身。作家。東北芸術工科大学特別講師。京都大学文学部卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程中退(日本史学専修)。大学院在学中の2008年、『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』で第4回MF文庫Jライトノベル新人賞優秀賞を受賞してデビュー。主な著書に『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』(GAノベル)、『物理的に孤立している俺の高校生活』(ガガガ文庫)、『ウタカイ 異能短歌遊戯』(ハヤカワ文庫)などがある。

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