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ポツンと佇む 津軽半島の再果てにある神社 竜飛弁天宮/青森県東津軽郡外ヶ浜町

神社仏閣好きラノベ作家 森田季節の推し寺社ぶらり【第16回】


津々浦々の神社・仏閣を訪ね歩くことを趣味にしているライトノベル作家の森田季節さん。全国に約16万もあるという神社・仏閣の中から、知見を生かしたマニアックな視点で神社・仏閣を紹介! あなたをめくるめく寺社探訪の旅に招待します。興味を持った方はぜひ現地に訪れてみよう。


 

ポツンと赤い建物がみえる。あれが竜飛弁天宮。撮影:森田季節

■達成感を求めて津軽半島の最北端にある神社へ

 

 各地を旅していて「日本一の〇〇」「日本最古の〇〇」みたいな看板を見ると、ついつい寄り道をしてしまいます。それを目にしたからといって自分のレベルが上がるわけでもないのですが、なにかしらの達成感があるので。今回取り上げるのはそんな達成感の得られる津軽半島の最北端にある神社です。先におことわりしておくと、「龍」と「竜」が混在してますがそれぞれの施設で使ってる漢字が違うことがあるためです。

 

 日本は島国なので各地に海に突き出た半島があります。陸路で到達しようとすると時間がかかるので観光場所としては敬遠されがちですが、津軽半島の場合は果てだからこその観光施設が充実しているのでオススメです。まず、国道なのに階段であることで有名な国道339号(の階段部分)。津軽海峡を高台から見下ろす龍飛埼(たっぴさき)灯台。そのそばの津軽海峡冬景色の歌碑。坑道にも入れる青函トンネル記念館。寺社に興味がない人でもせっかくだし立ち寄ろうと思うスポットがいろいろあります。

 

日本でここでしか歩けない国道の階段。登るしかない。撮影:森田季節

 そんな灯台や歌碑のある崖から海やふもとの龍飛漁港を見下ろしていると、本州部分からコンクリで結ばれた小さな岩が突き出たような島が見えます。帯島(おびしま)という島です。地図で確認すると半島の北側に突き出ており、厳密には島かもしれませんが、徒歩で行ける場所を半島に含めれば半島の最北端に当たります。龍飛漁港の一部になっている小さな島ですが、そこに不自然に赤い建物が。結論から言えば、これが津軽半島最北端の神社です。

 

 現地に行ってみると、稲荷神社の鳥居で見るような赤の鳥居が数基あり、その奥にこれまた全面を赤く塗られた神社が建っていました。竜飛弁天宮という名前が社殿に入っているのぼり旗から確認できます。下北半島のほうが津軽半島より北に突き出ているので本州最北端の神社とは言えないのですが、だとしても果てに来たという旅情を感じさせます。決して由緒ある建築ではないですし、のぼり旗なども倉庫のような社殿に入っていますが、これは自然環境によるものでしょう。近くの公衆トイレには「日本一の風を受けるトイレです」という張り紙があったぐらいですから、うかつにのぼり旗など立てていれば海に流されますし、建物も傷むはずです。

 

真っ赤に塗られた鳥居と社殿が特徴的な竜飛弁天宮。 撮影:森田季節

 神社には説明板もないですし、観光客用の案内板などにもこの神社は触れられていません。気取ることもなく、半島最北端の神社をアピールすることもなく、ごく普通に海のそばでたたずんでいる――ああ、信仰というのは生活必需品なのだなと感じました。海が荒れている時、風雪が激しい時、祈らないといけない局面というのは間違いなくあるはずなので。

 

 それと、弁天様からしたら「知らんがな」と思われるかもしれませんが、公共交通機関だけで本州の果ての一つと言っていい場所にまで来られる交通インフラにありがたさを感じました。津軽線の蟹田と三厩(みんまや)の間は鉄道としては廃止することが決まってしまったようですが、車に乗れない人間でも気楽に訪れる場所であり続けてほしいです。

 

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森田季節もりたきせつ

1984 年生まれ、兵庫県出身。作家。東北芸術工科大学特別講師。京都大学文学部卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程中退(日本史学専修)。大学院在学中の2008年、『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』で第4回MF文庫Jライトノベル新人賞優秀賞を受賞してデビュー。主な著書に『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』(GAノベル)、『物理的に孤立している俺の高校生活』(ガガガ文庫)、『ウタカイ 異能短歌遊戯』(ハヤカワ文庫)などがある。

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