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国内最古の霊山かも!? 次々と現れる滝に圧倒される「7つの滝を神域とした寺」 犬鳴山七宝瀧寺/大阪府泉佐野市

神社仏閣好きラノベ作家 森田季節の推し寺社ぶらり【第22回】

 


津々浦々の神社・仏閣を訪ね歩くことを趣味にしているライトノベル作家の森田季節さん。全国に約16万もあるという神社・仏閣の中から、知見を生かしたマニアックな視点で神社・仏閣を紹介! あなたをめくるめく寺社探訪の旅に招待します。興味を持った方はぜひ現地に訪れてみよう。


 

雨に濡れた岩肌が美しい行者の滝。犬鳴山中には両界の滝・塔の滝・弁天の滝・布引の滝・固津喜の滝・行者の滝・千手の滝という7つの滝があり、これらが寺名の由来となってる。撮影:森田季節

■滝の多いハイキングコースを進んでいる感覚で散策

 

 テレビのバラエティとかでたまに滝行(たきぎょう)をしていますね。本来、修行やみそぎのためなのでバラエティですることじゃない気もしますが、映像的なインパクトがあるのかちょくちょく企画で見ます。

 

 この滝行ですが、一般の人が勝手に自然の滝に突っ込んでいくというケースは(あまり)ないはずで、原則として滝を管理している寺社に許可を得たうえで行っているはずです。というわけで滝は寺社とも関わりが深いです。不動明王を祀っているような寺院では自然の滝がない場合でも、人工の滝行の場所を持ってるところも意外とあります。また、熊野那智大社のように滝自体がご神体の意味を持っている箇所もあります。

 

 中には境内にいくつも滝があって、次々に滝が現れるような場所もあります。今回はそんな寺院を紹介します。関西国際空港がある泉佐野市からバスで山中に入ると、犬鳴山(いぬなきさん)七宝瀧寺(しっぽうりゅうじ)に着きます。

 

そそり立つ圧倒的な岩は、大黒天の岩屋とされ、一帯が神域となっている。撮影:森田季節

 こちらは昔から修験道の聖地で、滝とも縁のある不動明王がご本尊です。境内に入ってからも巨岩の間を縫うように少しずつ高度を上げていきますが、ところどころに滝が現れます。境内を歩いているというより、滝の多いハイキングコースを進んでいる感覚です。滝は高低差のあるものもあれば、ちょっとスケールが小さく思えるものもありますが、とにかくやたらと滝が来る! ここまで大量の滝が境内に取り込まれている寺院は意外と少ないのではないでしょうか。

七爆のひとつ塔の滝。犬鳴山の山中には、大小数えて48もの滝があるという。撮影:森田季節

 しばらく進んでいくと、犬の像が。犬鳴山という名前のいわれである義犬伝説にちなむものです。大蛇から猟師を守ろうとして吠えまくった犬が、獲物を逃がしたと思って怒った猟師に首をはねられる。だが、その犬は首だけになっても大蛇に噛みついて猟師を守った。自分を救おうと吠えていてくれたと気づいた猟師は非を悔いて愛犬を供養した――というよくある内容の話ではありますが、この手の話を聞くたびに「カッとなってペットを殺すような奴の異常性のほうがまさるので、美談のほうが薄れる……。犬がかわいそう……」とは思います。ペットの価値観が違う時代に生まれた伝承だとは思いますが、案外大昔の人も「犬を褒める前に、猟師に罰が当たるべきでは?」とか言ってたんじゃないでしょうか。

 

 境内の終点に当たるところにはラスボスのような行者の滝が控えています。今でも修行者の方が滝行に使う場所で、厳かでありながら、荒々しさよりも美しさが上回る滝です。厳密には登山ではなくてお寺の参拝ですが、滝を眺めていると、ここまで上がってきてよかったなと実感します。

 

 お寺の近くには温泉施設もいくつかあります。滝を見るために歩き疲れても回復できるので安心です。

 

 

 

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森田季節もりたきせつ

1984 年生まれ、兵庫県出身。作家。東北芸術工科大学特別講師。京都大学文学部卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程中退(日本史学専修)。大学院在学中の2008年、『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』で第4回MF文庫Jライトノベル新人賞優秀賞を受賞してデビュー。主な著書に『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』(GAノベル)、『物理的に孤立している俺の高校生活』(ガガガ文庫)、『ウタカイ 異能短歌遊戯』(ハヤカワ文庫)などがある。

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