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男と女が座ったまま、向き合う体位「居茶臼(いぢゃうす)」【江戸の性語辞典】

江戸時代の性語70


ここでは江戸で使われていた「性語」を紹介していく。江戸時代と現代の違いを楽しめる発見がある。


 

■居茶臼(いぢゃうす)

 

 女上位の体位のひとつで、男があぐらをかき、太腿の上に女をのせておこなう性交。

 

 男と女が座ったまま、向き合う体位である。

 

【図】居茶臼の男女(『古今色角力』宝暦三年頃、国際日本文化研究センター蔵)

 

【用例】

①春本『古今色角力』(宝暦三年頃)

 

 居茶臼でしている男女。

 

女「今夜は抜かずに続けて」

男「そのように身をもむと、はずれるぞ」

 

 【図】は、女が身もだえしてよがっている様子である。男は女の動きが心配なようだ。

 

 

②春本『好色春の風』(石川豊信、宝暦十年頃)

 

 男が居茶臼をしようとして、女をうながす。

 

男「よく生(お)えた。さあ、上へ乗りや」

女「わっちゃ、恥ずかしい」

 

 「生える」は、勃起すること。男は勃起具合は充分と見て、居茶臼を始めるようだ。

 

 

③春本『閨暦大雑書玉門大成』(不明)

 

 女は十五歳で初体験をしてより、

 

 三年このかた、巧者ができて、本手ばかりは面白うない、茶臼にしようの、尻からしてみようの、居茶臼、横取り、たてになり、昼もすきさえあると、ちょこちょこ、ちょんの間、

 

 三年間でテクニシャンになり、女の方からいろんな体位をためしたがったのである。

 

「ちょんの間」は、第21回参照。

 

 

④春本『閨玉卅六佳撰』(恋川笑山、安政三年)

 

 野外で始めた夫婦。夫よりも妻の方が大胆だった。

 

「どうも、人が来そうで、気がせいてならぬ」

 と言えば、

「そんなら、おまえさん、ここへ、しゃがんでおいでなさい。私が上からまたぐから」

 と、居茶臼という手にして、わが手にへのこを握って、ぬっと入れさせ、女房の方からさっさっと腰を使いながら、

「こうしていれば、もし人が来ても、私がついと立てさえしまえば、何をしていたのか知れませんよ」

 

 

⑤春本『浮世源氏五十四帖』(恋川笑山、文久年間)

 

 正常位で射精したあと、そのまま、

 

 さらば今度は居茶臼にして堪能させんと、へのこをば入れたるままにして抱き起し、とかくするうち、一物(いちもつ)が中にていよいよ生(お)え返り、かしこまりて太腿に睾丸(きんたま)をはさみてあるゆえに、へのこの勢いますます鋭く、

 

 男は精力絶倫のようだ。

 

 

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過去記事

永井 義男ながい よしお

1997年『算学奇人伝』で開高健賞受賞。時代小説のほか、江戸文化に関する評論も数多い。著書に『江戸の糞尿学』(作品社)、『図説吉原事典』『江戸の性語辞典』『剣術修行の廻国旅日記 』(以上、朝日新聞出版)など多数。

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