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男性の名品たることに欠かせない要素のひとつ「雁高(かりだか)」【江戸の性語辞典】

江戸時代の性語68


ここでは江戸で使われていた「性語」を紹介していく。江戸時代と現代の違いを楽しめる発見がある。


 

■雁高(かりだか)

 

 雁(亀頭)が大きいこと。「高い」は、大きいの意味である。 

 

 雁高や、雁が高いと表現した。

 

 陰茎の名品を「紫色雁高(ししきがんこう)」という。「紫色(ししき)」は陰茎の色が紫がかっていること。「雁高(がんこう)」は、雁高(かりだか)である。

 

【図】雁高に見とれる。(『風流三代枕』菊川秀信、明和二年、国際日本文化研究センター蔵)

 

【用例】

①春本『風流三代枕』(菊川秀信、明和二年)

 

 女が男の陰茎を見て、しみじみ言う。

 

「こなさんのような雁の高いのは、またとあるまい。これは惚れたぞ」

 

 図は、女が陰茎の雁高に見とれているところである。

 

 

②春本『艶本千夜多女志』(勝川春潮、天明五年頃)

 

 女は間男の陰茎を、亭主のものと比較して、評する。

 

 亭主の皮かぶりと違い、亀頭(かり)高く、むっくり、ふわり、やわやわとしたるものなれば、

 

 亀頭に「かり」と読み仮名がふられている。

 

 亭主は皮かぶり、つまり包茎だった。

 

 

③春本『色長者』(西川裕尹か、明和八年頃)

 

 女がよがりながら言う。

 

「ああ、おまえさんの、その雁が高うて、それ、そのように実(さね)に当たるところがよい。ああ、もう、いい」

 

「実」はクリトリスのこと。

 

 

④春本『漢楚艶談』(歌川国政、天保三年)

 

 女が男の陰茎をほめる。

 

「おめえのは太くって、長くって、イボイボがあって、雁高で、その上、性が巧者と言うもんだから、もう、もう、よくって、よくって」

 

 男は陰茎が逸品の上、テクニックも秀逸なようだ。

 

 

⑤春本『浮世源氏五十四帖』(恋川笑山、文久年間)

 

 男は一見するとひ弱そうだったが、陰茎はたくましい。

 

 顔に似合わぬ雁高の、紫色の上反(うわぞ)りに、陰茎(へのこ)の味を初めて知り、

 

 女は雁高の陰茎に、初めて感じたのである。

 

 

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過去記事

永井 義男ながい よしお

1997年『算学奇人伝』で開高健賞受賞。時代小説のほか、江戸文化に関する評論も数多い。著書に『江戸の糞尿学』(作品社)、『図説吉原事典』『江戸の性語辞典』『剣術修行の廻国旅日記 』(以上、朝日新聞出版)など多数。

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