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国土防衛の実情に合わせた汎用全天候戦闘機【サーブ35ドラケン】

超音速時代の到来~第2世代ジェット戦闘機の登場と発展~【第19回】


第2次世界大戦末期から実用化が推進された第1世代ジェット戦闘機は、朝鮮戦争という実戦を経験して完成の域に達した。そして研究はさらに進められ、亜音速で飛行する第1世代ジェット戦闘機を凌駕する超音速飛行が可能な機体が1950年代末に登場。第2世代ジェット戦闘機と称されて、超音速時代の幕が切って落とされた。前シリーズに続いて本シリーズでは、初期の超音速ジェット戦闘機(第2世代ジェット戦闘機)について俯瞰してゆく。


オーストリア空軍の国籍標識が機首側面と右主翼上面に描かれたサーブ35ドラケン。

 北欧の小国で中立を重視するお国柄でありながら、スウェーデンは工業先進国で、戦前から各種工業製品に加えて兵器類も自主開発し、それらの輸出販売などを行ってきた。かような背景に支えられたおかげで、第2次大戦直後に軍用機のジェット化が始まった際にも、独自にジェット戦闘機を開発するだけの工業力を備えていた。

 

 スウェーデンにおけるジェット戦闘機の開発・生産の主力となったのは、航空機を得意とするサーブ社で、サーブ21Rや同29トゥンナンといった初期の機体を次々とものにしていた。

 

 ところで、中立国であり北欧独特の自然環境下にあるスウェーデンは、その国防に使用する兵器に、当然ながら独自のコンセプトを求めた。その結果、専守防衛に任ずる迎撃戦闘機は、当初のトゥンナンこそ「世界に伍して使えるジェット機であれば、まずはそれでよし」とばかりにさほど厳しい要望はなかったが、後継となる機体には、さまざまな要望が寄せられた。

 

 それは、まずマッハ1.5級の超音速飛行が可能なことで、さらに、有事には幅広な道路を臨時滑走路代わりに使用できるよう、延長2000m程度の直線道路での離着陸が可能な短距離離着陸性能を備え、戦闘空域へのターンアラウンドを速くするために、給油と兵装搭載が10分以内で完了する能力などである。

 

 これを受けたサーブ社は、実用機では世界で初めてダブルデルタ翼を採用し、短距離離着陸性能の向上を図った。火器管制装置と射出座席も国産品を開発して装備。エンジンには、外部動力を必要とせずに始動できるスターターが組み込まれ、野戦応急飛行場からの緊急発進を可能とした。特徴的なのは、野戦展開時に林や納屋などに隠蔽収納するため、左右の外翼を取り外して機幅を狭められる構造が採り入れられていることだろう。

 

 このように、スウェーデンならではのニーズがいくつも盛り込まれた超音速迎撃戦闘機はサーブ35ドラケン(スウェーデン語で「竜」の意)と命名され、1955年10月25日、初飛行に成功。計615機が生産され、のちには対地攻撃能力も付与されて、同国空軍では1999年まで運用が続いた。

 

 また、デンマーク、フィンランド、オーストリアの各国も本機を運用した。

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白石 光しらいし ひかる

1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。

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