文句なしのラスボス仏像! 口を半開きにして拝観する「日本一の毘沙門天」は駅から5キロ、さらにラストスパートの400段以上の石段の先に!【行きづらい神社】
神社仏閣好きラノベ作家 森田季節の推し寺社ぶらり【第47回】
※移動には公共交通機関を利用しています。
■動き出して敵を制圧しそうな荒々しさを感じる毘沙門天
今回ご紹介するのはスケールも衝撃も規格外、一方で公共交通機関でたどりつく難易度も規格外の仏様です。高さ5メートル近い、平安時代中期の兜跋毘沙門天(とばつびしゃもんてん)立像は、その巨体にもかかわらず一木造(いちぼくづくり)! 公式ホームページでも「日本一の毘沙門天」を謳っています。しかもそれが平安時代のものということですから、当時の信仰の強さと深さを感じます。
ただ、この毘沙門天様にお会いするのがとにかく大変です。その日、午前中に民俗学の聖地とも言える遠野市を回ったあと、遠野駅13時10分頃発の列車で花巻方面に戻り、14時前に新花巻の2個手前の土沢(つちざわ)で降りました。宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』の作中での出発地にもなっている駅ですが無人駅になっており、現在はひっそりしています。そして、この駅が成島毘沙門堂(なるしまびしゃもんどう)への一応の最寄り駅です。距離は約5キロ。バスは調べた限りだと、訪問当時も今も便利なものはないようです。公式ホームページでも土沢駅から車で10分、新花巻駅から車で20分と書いてあり、車を使わない参拝はあまり想定してないようです。次の列車は約2時間後なので、急いで小走りで往復すればかろうじて参拝できます。
5キロの道のり自体は歩道も整っていて、そこまでストレスはありません。5キロもないと感じるぐらい、体感では早く目的地に着きそうでした。ですが、ゴール間近で難関が待っていました。石段が400段以上続いています……。途中から数えたところ、少なくとも413段ありました。なかなかきつかったですが……ラストスパートのつもりで石段を踏破しました。40分弱で到着したので拝観時間は確保できました。

毘沙門天様を祀る三熊野神社の鳥居
ずっと毘沙門堂と書いてきましたが、実質的には三熊野(みくまの)神社という神社の境内に毘沙門天様を祀るお堂(毘沙門堂)があるという形式です。なお仏像の保護の観点から、現在、毘沙門天様はコンクリートの宝物殿に安置されています。ただ、毘沙門堂自体が東北ではとくに貴重な中世の建築で、重要文化財に指定されています。県の文化財に指定されている三熊野神社の社殿ともどもこちらも是非見学・参拝しましょう。
さて、念願の毘沙門天様と対面したわけですが、ここまで大きいととにかく呆然としますね。参拝後に書いたメモに「口を半開きにして拝観」と書いてありました。下から見上げるような構図になるので、実際の像高よりもさらに大きく見えます。毘沙門天信仰は四天王として祀られる際に北方守護の役割を担っているためか、北のほうで強いイメージがありますが、この毘沙門天様は動き出して敵を制圧しそうな荒々しさを感じます。古仏を拝観する際、美しいと思うことはよくありますが、ここは強いなという印象が何より先に来ます。
無事に土沢駅発の列車にも乗れて花巻方面に戻れました。車がないと参拝しづらすぎる仏様ですが、本当にその価値はあります。

毘沙門堂。かつてはこの中に「日本一の毘沙門天」が鎮座していた