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戦国武将・文化人・政治家と三刀流として名を馳せた細川幽斎や熊本で幕末まで家を残した忠興など、数々の逸材を輩出した名家【細川家】の歴史とは⁉【戦国武将のルーツをたどる】

戦国武将のルーツを辿る【第16回】


日本での「武士の起こり」は、遠く平安時代の「源氏」と「平家」に始まるという。「源平」がこれに当たるが、戦国時代の武将たちもこぞって自らの出自を「源平」に求めた形跡はある。だが、そのほとんどが明確なルーツはないままに「源平」を名乗ろうとした。由緒のあるか確たる氏素性を持った戦国大名は数えるほどしかいない。そうした戦国武将・大名家も、自分の家のルーツを主張した。絵空事も多いが、そうした主張に耳を貸してみたい。今回は足利氏の一族が発祥の室町幕府の名門・細川家の歴史を追う。


 

勝竜寺城に立つ細川幽斎の息子・細川忠興とその妻・ガラシャの像。

 

 室町幕府の後半、管領として幕府の実権を握った細川氏は、足利氏の一族として三河・細川(現在の愛知県岡崎市)を発祥の地とする。始祖・細川清氏(きようじ)は武勇に優れ、足利尊氏の政権を支え、南朝方との戦いを勝ち抜いて、勝利に導いた実績を持つ。だが、2代将軍・足利義詮(よしあきら)は、清氏の実力を恐れ、細川一族の細川頼之に 討ち取りを命じた。頼之は命令通りに清氏を討ち果たし、細川一族の統領の座に就いた。

 

 この頼之が、3代将軍になる足利義満を支え、室町幕府の基礎を固めるのに力を尽くした。頼之の細川氏は「本家・京兆家」と称し、摂津・丹波・讃岐・土佐の守護となり、さらには一族で和泉・淡路・阿波・備中までを支配するなど繁栄の時代を築き上げた。

 

 応仁・文明の乱(1467~77)では東軍の総大将として細川勝元が、西軍の山名宗全と死闘を繰り広げたが、戦いの終わる2年前に病没して、政元が後継者となった。政元はわずか8歳であったが、一族の補佐などで結束は破れることがなかった。

 

 成長した政元は10代将軍・足利義稙(よしたね)を追放して、その従兄弟に当たる足利義澄を11代将軍に擁立するなど、管領として室町幕府の実権を握り続けた。この政元は、管領でありながら、怪しげな術を使うなど不可思議な人物として同時代人には、気味悪がられたという。永正4年(1597)、政元は家臣によって暗殺される。政元には子がいなかったために管領・細川家では、公家の九条家から細川澄之、細川一族から細川澄元、という2人の養子を貰ってあった。当然のことながら、政元の死後に内訌が起き、一族の細川高国の支援を受けた澄元が勝利した。

 

 しかし、澄元を支援したはずの高国が、翌年になって澄元打倒に兵を挙げた。こうして細川一族は、内訌から一族の抗争が果てしなく繰り返されることになった。その疲弊が、細川一族を没落させていった。

 

 細川氏の凋落最中に、幕臣の三淵晴員(はるかず)の2男として生まれたのが、後に細川幽斎になる藤孝であった。かつて細川氏に家臣として仕えていた三好長慶が台頭して「天下人」同然になると、管領の細川晴元は13代将軍・足利義輝とともに近江に逃れた。京兆家として振る舞ってきた細川本家は、晴元の次の昭元の代で滅亡する。

 

 三淵氏に生まれた細川藤孝は、叔父に当たる「泉守守護家」の細川元常の養子になった。和泉国は上下に守護家が二分されていたが、その上家の主が元常であった。戦国時代に入っており、、守護とは名ばかりで、元常に実権はなかった。だが藤孝は将軍家に仕え、特に三好三人衆や松永弾正に将軍・義輝が暗殺された後には、その弟・義秋(後に義昭)を支えた。最終的には織田信長によって義昭が庇護されて、藤孝も義昭の御供衆でありながら他方で信長の家臣として仕えた。明智光秀との出会いも、この前後であった。

 

 そして、本能寺の変を経て、豊臣秀吉の時代にはその家臣として仕え、さらには隠居して嫡男・忠興に家督を譲って「幽斎」と号した。

 

 さらに慶長3年(1598)、秀吉が病没し、天下の情勢が揺れ始めると、幽斎・忠興は「徳川家康こそ次の天下人」と定めて、関ヶ原合戦を始め、家康の側に立って戦った。その武功もあって、細川家は豊前・小倉39万9千石の大名になった。さらに忠興の嫡子・忠利の代には、庇護・熊本54万石の大大名として徳川・明治の時代から現代まで、名門・細川家の血筋を脈々と伝えている。

 

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江宮 隆之えみや たかゆき

1948年生まれ、山梨県出身。中央大学法学部卒業後、山梨日日新聞入社。編制局長・論説委員長などを経て歴史作家として活躍。1989年『経清記』(新人物往来社)で第13回歴史文学賞、1995年『白磁の人』(河出書房新社)で第8回中村星湖文学賞を受賞。著書には『7人の主君を渡り歩いた男藤堂高虎という生き方』(KADOKAWA)、『昭和まで生きた「最後のお殿様」浅野長勲』(パンダ・パブリッシング)など多数ある。

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