【Mummy-D×KOHEI JAPAN】歴史学者・平山優先生とゆく! 長篠・設楽原の戦いを偲ぶ旅
Mummy-D&KOHEI JAPANの遠い目症候群#10
<Mummy-D&KOHEI JAPANの今日も遠い目で一献!>
歴史を肴に、美味しいお料理を堪能しながらゆるゆる語らうコーナー。
平山先生と共に、1日を振り返ってまいります。
執筆/チャック・ザ・ジッパー

平山先生、ありがとうございました!
Mummy-D(以下D):さて本日は、歴史学者の平山優先生と一緒に、長篠・設楽原古戦場跡周辺を見て回りましたけど、コーヘイはどうだっだ?
KOHEI JAPAN(以下コ):やっぱり先生の解説付きだと理解度が全然違うよね。もともと長篠・設楽原の戦いっていえば、織田軍が鉄砲で圧倒したっていうイメージだったけど、実際は少し違ってたというか……。
D:先生、実際は武田軍も相当の鉄砲を持っていたんですよね?
平山優先生(以下平山):その通りです。武田って、武器装備全体の10%が鉄砲なんですよ。となると、この戦いでも武田軍1万5000人のうち1500丁前後は鉄砲持ちだったという計算になります。しかも鉄砲の種類も武田軍の方が多かったんですよ。
D:ほほう!
平山:もともと武田は皇治元年(1555)の 第二次川中島合戦のときにすでに500丁ほどの鉄砲を使用していますので、武田は決して「鉄砲を軽視していた」ということはないんですね。
コ:なるほど。おれらが教科書で覚えた知識がなかなかアップデートできてないだけなんですね。反省。
平山:よく長篠・設楽原の戦いって、織田・徳川の新戦法(鉄砲)VS武田の旧戦法(騎馬)の戦いっていうイメージですが、実際は「西」と「東」の戦いなんです。織田方は堺・大阪・京都を抑えていたことで南蛮貿易にアクセスして物流の中心を握っていたんです。
D:つまり織田・徳川軍は物資やその品質などで、武田を上回っていたってことですか?
平山:そうです。例えば鉄砲の弾。織田・徳川方のものは鉛玉なんですが、武田の弾は青銅の弾なんです。それを分析すると、当時中国から輸入して日本で流通していた渡来銭と同じ成分で、つまりは銅銭を潰して鉄砲の弾にしてたんです。さらに火薬の原料となる硝石も、当時は輸入品が主だったので、織田・徳川方は二重三重にアドバンテージがあったんですよ。
コ:そんな鉄砲隊の前に武田の騎馬隊はバタバタと……。今日歩いてみてよく分かったけど、互いの陣地はすごく近いのに、当時の連吾川の周辺は今と同様田んぼだから、あれじゃ騎馬隊も役に立たなかったよなあ……。
D:しかも川を渡れる場所も竹広と柳田前、大宮前の3か所くらに絞られてたんですよね? 「武田軍は騎馬で無謀な突撃を繰り返した」とかいわれているけど、戦い方もかなり限られたんだろうね。
平山:実は当時は突撃というのは無謀な戦術ではなく、極めて有効だったんですよね。火縄銃はどうしても構えたり弾を込めるなどの時間がかかるわけで、そのための対策として三段撃ちなんだけど、やはり敵が大挙して向かってくるのは怖いですよ。実際、土屋昌次などは馬防柵に取り付いてますし、本多の記録には三重の柵を破って陣地に突入してきたっていう記述もあるんです。
D:へえ~、必ずしも無策ゆえの突撃じゃなかったんですね。
コ:その三段撃ちというのは、本当だったんですか?
平山:三段撃ちの「段」というのは「列」のことではなく、現在では部隊の数のことといわれています。要は鉄砲隊が3つあって、それぞれの鉄砲隊内で隊員どうしがカバーしあって、準備ができた人間から撃っていたんだろうと。ただやはり武田軍は織田・徳川軍に肉薄しつつも、物量や質の差によって先に沈黙しちゃったんだと思いますね。
D:そして遂には勝頼が退却を決断した……と。そうそう! 土屋昌次の碑は馬防柵のところにありましたけど、そのほかの有名武将の碑はほとんどが連吾川の東側にあったのが印象的でした。
平山:武田軍はみんな鉄砲に撃たれて柵の周辺で死んでると思われがちなんですが、供養塔を見ると、みんな柵より遠いところで死んでるんです。主君である勝頼を逃がすために、踏みとどまって死んでいるんですよ。
D:今回はそれを知って、一番びっくりしましたね。
コ:追撃してくる織田・徳川軍に対して、勝頼を逃がすために、ここでは山県昌景隊が、あっちでは真田信綱・昌輝兄弟の隊が食い止めてって感じで点々と……切なくなるなぁ。
D:長篠・設楽原古戦場跡はそういった史跡がしっかり整備されていて、ドラマが可視化できるのが非常に良かった。ってことで、今回の点数は5点です。コーヘイは?
コ:5に決まってっしょ!
D:なにを偉そうに(笑)。とはいえ、とても1日じゃ足りないので、またいつかプライべートでじっくり観たいっスね。それでは平山先生はここまでということで……。
D&コ:平山先生、今日はありがとうございました!
