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石破氏退陣でもしも“高市政権”が成立したら… 自民党総裁選後の日中関係はどうなる?


 

 自民党総裁選をめぐる政局が急変した。石破茂首相は97日、参院選大敗の責任を取る形で退陣を表明した。在任わずか11カ月で、党内野党の攻勢に屈した形だ。後任総裁選は104日投開票の予定で、注目を集めるのはタカ派の急先鋒、高市早苗前経済安全保障相の動向である。高市氏が総裁に就任すれば、初の女性首相誕生となるが、日中関係は一気に緊張を極める可能性が高い。

 

 石破政権は、穏健な外交路線を基調としていた。安倍・岸田両氏の遺産を引き継ぎつつ、中国に対しては経済協力と安全保障のバランスを重視。尖閣諸島周辺での中国船活動を注視しつつ、首脳会談を通じて対話の窓口を維持してきた。こうした姿勢は、日中間の貿易摩擦を緩和し、安定した関係構築に寄与した。しかし、党内では「弱腰」との批判が噴出し、退陣の引き金となった。 

 

 これに対し、高市氏は一貫したタカ派として知られる。憲法改正や防衛力強化を訴え、中国の軍事拡大を「脅威」と位置づける。過去の総務相時代から、靖国神社参拝を公言し、歴史認識を巡る中韓との対立を厭わない。経済安保相在任中も、サプライチェーンの中国依存脱却を推進。尖閣ブイ撤去を主張するなど、領土問題で強硬姿勢を崩さない。高市政権が誕生すれば、これらの政策が加速し、中国側は「反日」キャンペーンを激化させる恐れがある。

 

 日中関係悪化のシナリオは多岐にわたる。まず、安全保障面で中国軍機の領空侵犯が増加する可能性だ。高市氏の防衛強化策は、日米同盟を基軸にミサイル配備を進めるだろう。中国はこれを「包囲網」とみなし、台湾有事への備えとして東シナ海での挑発を強める。次に、経済分野。半導体やレアアースの供給網再編が本格化すれば、中国の対日輸出規制が報復として発動。両国貿易額は年間40兆円規模だが、摩擦は企業活動を停滞させる。

 

 さらに、外交の停滞も懸念される。高市氏の靖国参拝は、中国の「歴史カード」を刺激し、首脳会談を凍結させる。安倍政権下で築かれた信頼基盤が崩れ、ASEAN諸国を巻き込んだ地域対立を招く恐れがある。一方、国内では高市氏の支持基盤が保守層に強く、政権安定は期待できるが、国際孤立を招けば経済成長の足かせとなる。

 

 高市政権の是非は、バランスの取れた外交か強硬路線かの選択だ。日中関係は互恵が鍵だが、タカ派政権下で悪化すれば、日本は新たな試練に直面する。総裁選の結果が、アジアの平和を左右するだろう。

写真AC

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プロバンスぷろばんす

これまで世界50カ国ほどを訪問、政治や経済について分析記事を執筆する。特に米国や欧州の政治経済に詳しく、現地情報なども交えて執筆、講演などを行う。

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