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まるでスプラッター映画⁉︎  じつは残酷な古事記&日本書紀 ヤマトタケルの裏の顔とは?

「古事記と日本書紀」#4


英雄として知られるヤマトタケルだが、じつは古事記・日本書紀(記・紀)において、彼の残酷な所業が記されている。手足をもぎ取ったり、尻から剣を刺したりと、まるでスプラッター映画のような描写がされているのである。どういうことか、見ていこう。(「歴史人」2024年4月号から一部を抜粋・再編集しています)


 

■だまし討ちや残酷な殺害は責められるべきものではない

 

ヤマトタケル(東京都立図書館)

 ヒーローとして扱われる一方で、記・紀を読んでいると、ヤマトタケルは策略家で残酷な人物のように描かれている箇所もある。

 

 たとえば、父・景行天皇との神聖な朝夕の会食の場に出てこない双子の兄オオウスノミコトを殺害する場面では、厠から出てくる場面を待ち受け、身体をつかんだかと思うと手足をもぎ取り薦(こも)に包んで投げ棄てる。

 

 クマソタケルの兄弟をだまし討ちにする場面では、女装して油断させた後、まずは兄の衣の首をつかんで一気に胸を剣で刺し通し、逃げる弟を建物の階段の下に追い詰め、背中をつかんで剣を尻の穴から刺し通す。

 

 イズモタケルを討ち果たす場面では、自身は木刀を身につけて、肥の河での沐浴の場に誘い、イズモタケルより先に河から上がったかと思うと、イズモタケルが身につけていた横刀を奪って、イズモタケルを打ち殺す。一方、蝦夷征討の場面では、大きな鏡を船にかけて、蝦夷を威嚇し、戦わずして降伏させる。

 

 ヤマトタケルという名前の意味については、一般的には「大和の勇猛な人」と解されているが、この名前にはそんな牧歌的な意味はない。ヤマトタケルという人名には「ヤマトの猛々しい人物」という意味が込められている。

 

 なぜ、そのようなことが言えるのか。改めて、記においてオウスノミコトがヤマトタケルになる場面を見ていこう。

 

 すでに記したようにこの時、クマソタケル兄弟の弟は、オウスノミコトに背中をつかまれ剣を尻から刺し通されていた。そのような状況下にあって、おそらく息も絶え絶えにヤマトタケルの名を、自分を惨殺しようとする者に奉った。

 

 これを聞き終えたオウスノミコトは、なんのためらいもなく、熟した瓜を切り裂くようにしてクマソタケル兄弟の弟を殺害したのである。

 

 それはあたかもスプラッター映画のような残酷な殺し方である。ヤマトタケルという名前は、このような殺しと密接不可分の関係にある。

 

 「勇猛な人」という言葉では、その名前に込められた本質をとらえ切れていない。最近、タケルのタケについては「呪術的な霊力や個人の心性とも切り離せない言葉」であるいう指摘がなされているが、要は「猛々しい」という意味であろう。

 

 それは劇画「タイガーマスク』において、正義の味方夕イガーマスクを倒すため虎の穴から白いマットのジャングルに送り込まれる「ルール無用」のレスラーに備わった能力に近い。

 

監修・文/森田喜久男

歴史人2024年4月号「古事記と日本書紀」より

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