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不沈艦を目指した戦艦「大和」の世界最強の防御力の秘密

「戦艦大和」物語 第5回 ~世界最大戦艦の誕生から終焉まで~


敵戦艦の主砲が当たっても沈没しない設計・構造であった戦艦大和。世界最強を誇った防御力の秘密に迫る。


1945年4月7日、坊ノ岬沖海戦において航空雷撃を受け、傾斜したまま航行中の大和。最終的には浸水の影響で転覆。直後に大爆発を起こして沈没することになる。

 

 さて、戦艦「大和」の主砲による「攻」の次は、装甲による「防」である。

 

 軍艦は頭の天辺(てっぺん)からつま先まで装甲(そうこう)で覆われているわけではない。かつてはそういう時代もあったが、高い防御力を維持しつつ重量を削減し、その分、船足を速くするといった発想も影響して、新しい考え方が登場した。

 

 それを簡単に言ってしまうと、主砲弾火薬庫、発令所、機械室、缶室、発電機、舵取機室など、バイタルパートと呼ばれる軍艦にとって重要な区画を特別厳重に分厚い装甲で守る代わりに、他の区画の装甲防御は適度のものにするという考え方である。しかも大和の場合、このバイタルパートをコンパクトにまとめることで、重装甲防御の範囲を圧縮するという優れた設計手法が講じられている。

 

 戦艦「大和」のバイタルパートは、射距離2000030000mから発射された46cm砲弾に耐えるように設計されていたという。

 

 大和の各部の装甲防御は、世界の軍艦の中でも最強で、甲板は200230mm、舷側上部は410mm、同下部は50200mmで、主砲塔の正面は650mm、天井は270mmだった。

 

 また、大和では排煙用に蜂の巣状の穴を開けた380mm厚の装甲板を、煙突内部の基部に水平に配置し、煙突から飛び込んでくる敵の砲弾を防御した。

 

 このように、理論上、また、数字では大和の防御力は世界一であり、しかも傑出して優れているといえた。にもかかわらず、大和もそして武蔵も、航空攻撃によって撃沈されている。それはなぜか? もしバイタルパートの防御が理論のように完璧であるなら、沈まないはずではないのか。

 

 この点について、乱暴ながらごく簡単に説明してしまうと、大前提となるのが、大和も武蔵も設計段階で想定されていた砲戦ではなく航空攻撃、しかも多数の被雷によってバイタルパート以外への浸水量が多くなり、それが原因で沈んでしまったのである。特に坊ノ岬沖(ぼうのみさきおき)海戦で戦没した大和の場合は、被雷が偏ったせいで片方の舷(げん)への浸水が多く、それが艦の傾斜を招き、ついには転覆に至って最期を迎えている。

 

 何本もの航空魚雷を被雷して浸水が重なると、防水措置作業やポンプによる排水が間に合わなくなり、このような事態となってしまうのだ。結局のところ、いくら不沈戦艦として設計されているとはいっても、ダメージの累積に抗する術はない。つまり「不沈」などあり得ないのである。

 

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白石 光しらいし ひかる

1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。

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