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四文均一で食事を売った江戸のワンコイン屋台とは?

江戸っ子に愛されたファーストフード 第8回 「四文屋(しもんや)」 


江戸には120円程度で軽い食事を楽しめる屋台風飲食店があり繁盛していた。その名は「四文屋」(しもんや)。そこでは何が売られ、なぜ江戸っ子が支持したかを解き明かす。


 

串に刺したイモや豆腐を煮たものを自分で選んで食べる。今のおでんの屋台のような感じだろうか。その場で食べるだけでなくテイクアウトもあったことがこの絵からわかる。「職人盡繪詞. 第2軸」/国立国会図書館

 四文? そんな食べ物が江戸時代にあったのだろうか。そういえば「四文屋」という居酒屋を首都圏などで見かけるが、あの店は江戸時代からあったのだろうか。それとも「しもん」という人がやっている店? いやいや「しもん」という人が始めたからそれを真似て「しもん」と名付けたのか。

 

 どれも違うのだ。4文というから今の金額に直すと120円くらいでなんでも食べられる店のことだ。具体的にはイモや豆腐を串に刺して、鍋で煮たものを屋台で商っていた。客は自分が食べたいものを選んで食べる。のちには煮物だけでなく、もち菓子などの菓子も売っている店もあったという。

 

 日本人は「〇〇円均一」というのが好きなようだ。今は均一料金ではなくなったが、回転ずしも初期のころは1100円均一を売りにしている店が多かった。また、「百均」と呼ばれる雑貨や食品などを税抜き100円で売る店が人気で、最近では税抜き300円均一の高級店も目につくようになってきた。

 

 この均一、基本はワンコイン。コイン1枚ならば気軽に出せるということだろう。でも、4文はワンコインではないのでは? この料金設定は、日本人が大好きなもうひとつの料金設定である、98円や980円など少しだけおつりが帰って来るタイプなのだろうか。

 

 実は4文という値段設定は江戸の貨幣制度と密接な関係がある。今は、10円硬貨が10枚で100円硬貨に、100円硬貨が10枚で1000円紙幣、さらに1000円紙幣が10枚で1万円と、10進法になっており、5円、50円、500円、5000円と、10の半分の通貨も便利なので存在している。

 

 ところが、江戸では、通貨は10進法ではないのだ。一番小さい単位が1文。庶民が使っていたのは文で、1文銭の真ん中には穴があいており、ここに紐を通して束ねて使うことが多かった。1文銭が4000枚で1両になる。1文と1両だけでは不便なので、この間の貨幣もあった。たとえば625文でその上の単位の1朱になる。さらに1朱金もしくは1朱銀が4枚で1分になり、1分金か1分銀4枚で1両となるのだ。

 

 なぜ4進法であったかといえば、徳川家康が尊敬していた武田信玄が4進法を採用しており、それを真似したかららしい。ちなみに、1文銭を100枚紐に通したものを緡といったが、数えてみると96枚しかないことがほとんどであった。4文は銭を紐に通す手数料だとされていて、これで100文として流通していたという。

 

 後に、銭の材料である銅の不足や物価の上昇などもあり、1文銭をたくさんつくることが困難になった。そこで、1文の上の単位の貨幣として明和5年(1860)に4文銭が鋳造された。これにより、4文が価格の単位となり、商品の値段が4文、8文、12文と4の倍数が多くなった。たとえば、串団子は1串4文、握りずしも1つ4文から、屋台のてんぷらも4文、甘酒も4文から8文、冷や水も1杯4文と店先でちょっと口にするような食べ物や飲み物は4文もしくは8文であった。さらに江戸を代表するファーストフードである「二八そば」も16文と4の倍数である。

 

 四文屋はワンコインで好きなものが食べられるため、安くて便利だから大変繁盛し、当時1位、2位を争う盛り場であった両国周辺には多数あったという。

 

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加唐 亜紀

1966年、東京都出身。編集プロダクションなどを経てフリーの編集者兼ライター。日本銃砲史学会会員。著書に『ビジュアルワイド図解 古事記・日本書紀』西東社、『ビジュアルワイド図解 日本の合戦』西東社、『新幹線から見える日本の名城』ウェッジなどがある。

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