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映画『ジャネット』『ジャンヌ』が謎を解く!異端審問で火刑に処されたジャンヌ・ダルクとは何者だったのか?

歴史を楽しむ「映画の時間」第25回 


神の啓示を受け、救国のため立ち上がったジャンヌ・ダルクーー。破壊的なヘヴィメタルサウンドが流れ、公開前より話題を集めた映画『ジャネット』。フランスのため立ち上がり奇跡のごとき戦果を上げるも異端審問にかけられ、最後は火刑に処された人生を描いた『ジャンヌ』。2作の映画から、ジャンヌ・ダルクとは何者だったのかが浮かび上がる。


神の啓示を受け救国のために立ち上がった羊飼いの少女はなぜ火刑に処されたのか?

映画『ジャンヌ』より © 3B Productions

 公開中の映画『ジャネット』と『ジャンヌ』の2作品は、15世紀に実在した少女ジャンヌ・ダルクを主人公にしている。

 

 『ジャネット』はフランス北東部の農村ドンレミの少女ジャネットが、フランス王国を救うためジャンヌ・ダルクとして歴史の表舞台に立つまでの物語。もうひとつの『ジャンヌ』は、鋼の鎧を身にまとったジャンヌ・ダルクがイングランド王国に囚われ、異端審問にかけられ火刑に処されるまでが描かれている。

 

王位をめぐりイングランド王国とフランス王国で繰り広げられた百年戦争

映画『ジャネット』より © 3B Productions

 この両作を通して見つめるのはジャンヌ・ダルクの内なるものだ。

 

 19世紀末から数年をかけて書き上げられたシャルル・ペギーの戯曲を原作に、1999年、『ユマニテ』でカンヌ国際映画祭のグランプリを獲得したブリュノ・デュモンが脚本・監督を務めている。

 

 14世紀のフランスは、カペー家のシャルル4世がフランス王として治めていた。だが1328年、その王の死により政情は揺らぎはじめる。男子の継承者がいなかったのだ。そのため、フランス王国はシャルル4世の従兄弟にあたるヴァロワ家のフィリップ6世を王とすることになった。

 

 異を唱えたのがイングランド王のエドワード3世。母はシャルル4世の妹であり、カペー家の流れを汲んでいたからだ。王位、そして領地問題などが絡まり、そこからイングランド王国とフランス王国の間で百年戦争と呼ばれる長き戦いが始まる。

 

「妖精たちの木」で知られた村で育った敬虔な13歳の少女はある日、神の声を聞いた…

映画『ジャネット』より © 3B Productions

 戦いが始まって70年以上が過ぎ、フランス王国はシャルル7世、イングランドはヘンリー5世から6世の時代へと移りつつあった。シャルル7世は領内の各所をイングランドに押さえられ劣勢であった。

 

 ジャンヌ・ダルクが生まれたのは、そのさなかの1412年といわれている。

 

 「妖精たちの木」と呼ばれるブナの古木が知られた村に育ち、教会が好きな、敬虔な少女だったという。その少女が13歳で神の声を聞く。「フランスを救え」「シャルル7世に戴冠させよ」と。その声に従い15歳で村を後にしたジャンヌ・ダルクは、流転を続けていたシャルル7世のもとに参じイングランド軍を退ける活躍をみせる。そしてシャルル7世は正統なフランス国王であることを内外に知らしめる戴冠式を挙行した。

 

神の声を聞いたジャンヌは「魔女」として19歳で異端審問にかけられた

映画『ジャンヌ』より © 3B Productions

 しかしジャンヌ・ダルクはその後の戦いでイングランド王国に囚われ、異端審問にかけられることになる。イングランドからすれば、敵勢力で神の声を聞いたとする人物は「魔女」である。

 

 裁きのための審問を受けたジャンヌ・ダルクは、19歳で異端者として火刑に処された。

 

破壊的なヘヴィメタルサウンドと舞踏で公開前から話題を集めた『ジャネット』

 

映画『ジャネット』より © 3B Productions

 

 『ジャネット』は公開前より怪作として話題を呼んだ。劇中で流れるヘヴィメタルサウンド、そして修道女とともに奇妙な舞いやヘッドバンキングを繰り返す映像に破壊的インパクトがあったからだ。

 

 川のせせらぎと木々の間を渡る風、そしてどこからともなく届く羊の鳴き声。そんな世界で生き、息をするのと同じ数だけ神に語りかけた少女がある日、神の声を聞く衝撃。観る者にとっても、その驚きを追体験しているかのようである。

 

異端審問で司教や判事に一歩も譲らなかった少女の強さと哀しさ

映画『ジャンヌ』より © 3B Productions

 続く『ジャンヌ』にそうした場面は見られない。だが『ジャネット』での、雷(いかずち)に打たれたような体験を経たことで、異端審問で司教や判事に一歩も譲ることなく神について語る少女の面差しに、強さと純真さ、そして哀しさを見ることができる。

 

 ドンレミの無垢な少女が「救国の戦士」として戦い、囚われの身となり牢の中で力なく横たわる。『ジャネット』と『ジャンヌ』、2作を通してジャンヌ・ダルクの光と喪失を知ることができる。

 

 

【映画情報】

12月11日(土)より渋谷ユーロスペースほか2作同時公開

 

『ジャネット』

映画『ジャネット』より © 3B Productions

監督・脚本/ブリュノ・デュモン

原作/シャルル・ペギー「ジャンヌ・ダルク」「ジャンヌ・ダルク愛の秘義」

出演/リーズ・ルプラ・プリュドム(ジャネット/ジャンヌ幼年期)、ジャンヌ・ヴォワザン(ジャンヌ15歳)、リュシル・グーティエ(デュラン)、アリーヌ・シャルル、エリーズ・シャルル(マダム・ジルヴェーズ)

時間/112分 製作年/2017年 製作国/フランス

 

『ジャンヌ』

映画『ジャンヌ』より © 3B Productions

監督・脚本/ブリュノ・デュモン

原作/シャルル・ペギー「ジャンヌ・ダルク」

出演/リーズ・ルプラ・プリュドム(ジャンヌ・ダルク)、ファブリス・ルキーニ(シャルル7世)、ギヨーム・エヴラール(クリストフ)

時間/138分 製作年/2019年 製作国/フランス

 

公式サイト

https://jeannette-jeanne.com

 

 

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隆次郎太郎りゅう じろうたろう

朝ドラ、大河ドラマを好んで観る。印象深い作品は『風と雲と虹と』『北条時宗』『澪つくし』『カーネーション』『半分、青い。』『スカーレット』。和田勉作品の『けものみち』『天城越え』も好きです。趣味は地形を味わいながらの散歩。

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