中国の歴史を彩った女性たちの魅力 ─戦う女傑から君主を支えた女帝まで─
歴史に名を残す女性たちの魅力
中国の長い歴史の中でも綺羅星のごとく、光る女性が登場する。戦いの中で猛将のごとく、男たち圧倒する女傑や勢力争いを制し、絶大な権力で歴史に与えた女性など。ただ歴史は男が常に中心に語られ、女性が登場することは稀であることも事実。そう考えると、歴史に登場する女性は余程有能であることがわかる。
中国国内でTV 視聴率&配信ランキング1位となった本格歴史エンターテイメント「燕雲台-The Legend of Empress-」で主人公として描かれたのは、契丹族が樹立させた、中国初の征服王朝・遼の歴史で国家統一を果たした伝説の皇后・睿智蕭皇后という人物であり、ヒットした裏側には、彼女自身が現代でも通用する魅力があったからであろう。
本記事では、世界中を惹きつける中国史の中でも歴史に名を残した女性たちにスポット当て、その魅力に迫っていく。
長い中国の歴史のなかでも大きな足跡を残し
語り継がれる女傑たちの魅力
本稿では、中国史に登場する女性を史実にしたがって紹介していきます。なお、中国の歴史書では、当時の価値観から女性が軽視される傾向があるので、史実ベースだと控えめな紹介になってしまいます。日本も同じですが、名前が伝わっている女性が少ないのも残念なところ。女性の活躍は物語のほうが、案外、現実に近いような気もします。
まずは、中国では巾帼英雄(巾帼は髪を飾る布)と呼ばれる女将軍をあげますと、殷王・武丁の妻である婦好。この人は最古の女将軍で、『史記』などの史書には記述がありませんが、甲骨文字の出土文献とお墓の発見で、実在が確認されています。

『燕雲台-The Legend of Empress-』より
つづいて、北魏の猛将・楊大眼の妻である潘氏。夫とともに戦闘で活躍しましたが、不貞の罪を犯して殺されました。唐の創業に貢献した平陽公主(唐の高祖・李淵の娘)は、女性だけの軍、娘子軍をひきいて戦いました。宋代の抗金の名将・韓世忠の妻である梁氏(物語では梁紅玉)は、高名な将軍である夫と並んで兵をひきいました。
明末の秦良玉は、正史の列伝に載っている唯一の女将軍です。少数民族の出身ですが、夫の後を継いで一軍をひきい、明に対する反乱軍や後金(後の清)のヌルハチと戦いました。
反乱を起こした女傑もいます。

『燕雲台-The Legend of Empress-』より
紀元一世紀、新末の呂母(呂育の母という意味)は、息子が些細な罪で役人に殺されたため、復讐に立ちあがりました。酒造りで富を築いていた呂母は、若者たちからは酒代をとらず、貧乏な者には衣服を与えました。そして、財産を使いはたしたところで、若者たちに復讐への協力を求めたのです。呂母にひきいられた若者たちは役所を襲って役人を殺しました。その後、呂母は亡くなりますが、少年たちは大規模な農民反乱である赤眉の乱に合流し、新朝を滅亡に追いこみました。さらに、新末には各地で農民反乱が起こっていますが、そのひとつは遅昭平という女性が起こしたものでした。
時代は下って明代、永楽帝の治世には、唐賽児という女性が反乱を起こしました。唐賽児は仏教系の白蓮教徒で、妖術を使って教えを広めたといいます。反乱は数万の規模に達し、官軍に鎮圧されましたが、唐賽児は姿を隠してついに逃げおおせました。この唐賽児の話は、清代に小説化されて人気を博しました。
そして、女性の活躍の場といえば、やはり宮中です。いわゆる漢民族の王朝は後宮も制約が厳しいので、遊牧民や狩猟民にルーツを持つ王朝のほうが、女性の発言力が大きくなります。楊貴妃や武則天を出した唐は北方の血が濃い皇室ですし(楊貴妃は政治に口出ししてはいませんが)、西太后の清は女真人の王朝です。

楊貴妃の銅像中国史だけでなく世界の歴史にも名を残す楊貴妃。その美貌を利用し絶大な権力を手にし、文学作品の題材となることが多く、詩歌、戯曲、小説、随筆に数えきれないほど描かれた。
遊牧民の国では、後継ぎを決める際に、母親の力が重要になることが少なくありません。モンゴル帝国では、後継のハンがなかなか決まらないケースがありましたが、鍵を握っていたのは女性たちでした。
モンゴルの二代目ハンであるオゴタイが急死したとき、摂政となったのは生存する皇后のうち最年長のドレゲネでした。次代のハンが決まるまで、国政を預かる役割です。モンゴルのハン位継承には、明確なルールはありません。一族のなかで、有力者たちの支持を得た者が、クリルタイという集会で選ばれてハンとなります。幼少の者や人徳のない者を選んでは、国の存亡に関わりますから、血筋だけでは決まらないのです。
ドレゲネは自分が産んだグユクをハン位につけようと、必死で多数派工作を行いました。チンギス・ハンの弟、オゴタイの孫、そしてオゴタイの甥モンケなどライバルは多く、とくにモンケは知勇兼備の将として支持を集めていました。ドレゲネは身分が高くなく、オゴタイ家にも味方は少なかったのですが、粘り強く交渉を進めて、ついにグユクをハン位につけることに成功しました。
しかし、これで安心したのか、ドレゲネはまもなく世を去り、グユクも二年の在位で没しました。グユクの后オグルガイミシュが摂政となりましたが、彼女はドレゲネのような剛腕ではありません。キングメーカーとなったのは、チンギスの四男トゥルイの正妃ソルコクタニ・ベキです。ソルコクタニ・ベキは、国の分裂を避けるためとして、ドレゲネには妥協しましたが、今回は自分の意思をつらぬきました。一族の重鎮バトゥと組んで、自分の息子モンケをハン位につけたのです。ちなみに、モンケの次のハンのフビライ、イラン方面を攻略してイル・ハン国を建てたフラグも、ソルコクタニ・ベキが産んだ子です。ソルコクタニ・ベキは偉大な母でもありました。
さて、時代が前後してしまいましたが、契丹もモンゴルと同様に、相続にあたっては女性の意思と力が、候補者そして国の運命を左右します。

『燕雲台-The Legend of Empress-』より
契丹を建てた英雄、耶律阿保機は遠征先から帰る途中に病死しました。まだ体制が脆弱な国は、まとめる者がいなければ四散しかねません。契丹は存亡の危機にありました。これを救ったのが、同行していた述律皇后です。述律皇后は名を月里朶(ユリド)と言い、耶律阿保機の存命中から、夫に助言を送っていました。夫の不在中に攻めてきた敵を打ち破ったこともあります。
述律皇后は、夫の死に際して、自分が摂政として政治と軍事をとりしきる旨、宣言しました。そして、遠征軍をまとめ、無事に帰還させます。耶律阿保機の葬儀が行われると、述律皇后は殉死を望みましたが、家臣たちは必死で止めました。そこで、皇后は言ったのです。
「ならば、右腕を陛下とともに」
述律皇后は右腕を切り落として、夫の柩に納めました。この行動には、勇猛果敢な契丹人たちもすっかり恐れ入って、述律皇后に忠誠を誓いました。
このとき、耶律阿保機の後継者候補として、成人したふたりの息子がいました。ふたりとも述律皇后の産んだ息子で、長男を突欲、次男を堯骨と言います。ともに優秀な息子たちでしたが、文にすぐれる突欲に対して、堯骨は武にすぐれるという違いがありました。述律皇后は聡明な突欲を嫌っており、素朴な堯骨をかわいがっていました。家臣たちはみな、皇后の意を汲んで、堯骨を支持しました。その結果、二代目は堯骨と定められたのです。これが後に燕雲十六州を獲得し、一時は華北を占領した太宗です。
なお、述律皇后は、太宗の死後、みずからの末息子を帝位につけようと画策し、齢六十九にして軍をひきいて孫の軍勢と対峙します。しかし、このときは我意を通せず、孫の即位を認めて矛を収めました。

『燕雲台-The Legend of Empress-』より
『燕雲台-The Legend of Empress-』の主人公である睿智蕭皇后は、この述律皇后と同じ一族の出身です。述律皇后ほどの凄味はないかもしれませんが、文武の臣をうまく用いており、調整力では上回っていた印象です。それでいながら、みずから軍をひきいて出征するわけですから、やはり遊牧民にルーツを持つ女性は強い。そう思います。
歴史書には、ロマンスの部分は記載されませんが、実際の歴史が慕情や嫉妬で動くことがあるのも事実です。そちらの方面で創作を加えると、歴史物語は奥行きを増して、ぐっとおもしろくなります。
華やかな宮中の描写、そして迫力あふれる戦闘シーン、これらは中国ドラマのもっとも得意とするところでしょう。その意味では、睿智蕭皇后はドラマの主人公となるにふさわしい人物です。彼女の美しさと知性、そして胆力に期待したいと思います。
「燕雲台-The Legend of Empress-」DVD&Blu-ray
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「燕雲台-The Legend of Empress-」DVD&Blu-ray
公式サイト https://kandera.jp/sp/enundai/
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愛と陰謀の渦中で、国家統一を果たした伝説の皇后の激動の生涯を描く、2021 年No.1 本格歴史エンターテイメント!<STORY>
契丹(きったん)人の国である遼の北府宰相・蕭思温(しょうしおん)の三女・蕭燕燕(しょうえんえん)は、父親と長女・蕭胡輦(しょうこれん)、次女・蕭烏骨里(しょううこつり)の愛を受けて真っすぐで勇敢な女性に育つ。そして、彼女は漢民族ながら遼の朝臣である韓徳譲(かんとくじょう)と出逢い、国の未来へ大志を抱く2 人はやがて愛し合うようになる。一方、朝廷では暴君として恐れられる第四代皇帝・穆宗(ぼくそう)の座を狙い、権力争いが続いていた。そんな中、皇后を輩出する后(こう)族の筆頭である蕭家の三姉妹は、王位簒奪(さんだつ)の切り札とみなされていた。その結果、簫胡輦が穆宗の弟・耶律罨撒葛(やりつえんさつかつ)に、簫烏骨里が初代皇帝・太祖(たいそ)の孫・耶律喜隠(やりつきいん)に嫁ぐことに。残された簫燕燕は韓徳譲と婚約を結んでいたが、暗殺された前皇帝の息子で韓徳譲の親友である耶律賢(やりつけん)に見初められ…。【2021 年11 月3 日(水)リリース】
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毎月順次リリース
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