丸裸で木に縛りつけられた「綿羊娘」の意外な反応とは? 外国人もドン引きした過激な「私刑」の流行
■淫らで卑しい女と差別された「らしゃめん」とは
現在放送中の朝ドラ『ばけばけ』では、主人公のおトキが外国から英語教師としてやってきたレフカダ・ヘブン(モデルは小泉八雲)の「らしゃめん」になる、ならないですったもんだが展開された。
幕末に港を開いて以降、来日する外国人男性の性の相手や妾のような存在になった女性は「綿羊娘(らしゃめん)」と蔑まれ、罵倒されたという。昭和初期に刊行された『幕末開港綿羊娘情史』には、時代の変革と共に外国人男性と日本人女性の間に起きた出来事を綴っている。
同書には、横浜居留地にいた外国人たちが遊郭で日本の女性を買い、さらに遊郭への出入りを憚っていた男でさえ「らしゃめん」を手に入れて満足していたと記す。しかし、当時らしゃめんたちは人々に「金に目がくらんで異人に性を売る卑しい女」として蔑まれた。
さて、同書ではある恐ろしいエピソードが紹介されている。「異人等は、わが綿羊娘が群衆から罵声を浴びせられている不愉快の光景を観たのみならず、驚くべき醜態を見たこともあった」と前置きした上で、なんとらしゃめんの女性が丸裸にされ、ほとんど何も身に着けていない状態で道端の松の樹に吊るされていたと綴るのだ。
萬延元年9月のある夜、異人館に通っている1人の遊郭らしゃめんが、居留地海岸通りの松の樹に縄で縛りつけられ、しかも丸裸にされていたという。そこを通りかかった外国人は、慌てて彼女を助けた。どうやら「らしゃめんは国の恥であり、厚顔無恥も甚だしい」と憤る人間が彼女を捕らえ、暴行に及んだのだろうということになった。
しかし、このらしゃめんは丸裸で縛り付けられているというのに、泣きもせず、鼻歌を歌いながら呑気にしている。助け出した外国人が「恥ずかしくはないのか」と尋ねたほどだった。こうした事件は他にも起きたらしいが、どのらしゃめんも裸にされても一滴の涙も流さず、まるで何事もないかのように振る舞うさまを見て、「さすがに女として羞恥心がなさすぎないか」と呆れたというのだから、勝手なものである。
「如何に綿羊娘を愛していても、ほとんど女の秘密まで晒けていた見せ物は、外人にとり甚だしく不愉快であったに違いない」とし、「かく女として羞恥がないのは、愛も本能欲も冷めざるを得ないのであった」などと結ぶ。
ちなみに、外国人の間では「なぜ日本の人々はらしゃめんを忌み嫌っていじめるのか」というのが話題になったらしい。何者かによるらしゃめんへの「私刑」を見るにつけ、不思議がったという。それに対してらしゃめんたちは「うらやましいから妨害をするのです。打ちやっておくがよろしうござんす。わたくし共は、御奉行様から許しを受けて、らしゃめんとなっているのですから、妨害すりや縛ってもらいます」とはっきり言い放ったという。

イメージ/イラストAC