高市新政権が誕生したら日中関係はどうなる? カギを握る「多角的外交」とは
高市早苗氏が自民党総裁に立ち、初の女性総理になる見通しだ。日本の政治史における画期的な出来事である一方、外交、特に日中関係においては、これまでとは異なる展開をもたらす可能性を秘めている。高市氏のこれまでの言動や政策志向を鑑みると、日中関係はより厳しい局面を迎えることが予想される。
高市氏は、安全保障や歴史認識において、従来から明確な保守的な立場を堅持している。総裁選を通じても、経済安全保障の強化、防衛費の大幅な増額といったタカ派的な政策を強く打ち出してきた。これらは、1つに中国の海洋進出や軍事力増強に対する、強い危機意識の表れと見て取れる。特に、経済安全保障担当大臣としての経験から、サプライチェーンの強靭化や重要技術の流出防止を重視しており、これらは結果として、経済面での対中依存度低減を加速させる方向に向かうだろう。
中国側は、高市氏の靖国神社参拝の継続の意向や、台湾問題に対する強硬な発言に、すでに強い警戒感を示している。中国外務省は、高市新総裁に対し「積極的で理性的な対中関係を堅持するよう希望する」と牽制しており、日中関係の悪化を避けたい意向も見えるものの、高市氏の姿勢によっては、関係冷却化は避けられないだろう。
今後、日中関係は「政冷経熱」から「政冷経冷」へと移行する可能性を孕んでいる。政治面では、歴史認識や尖閣諸島、台湾を巡る問題で、日本側が毅然とした態度を維持することで、対立の構図が鮮明になることが予想される。一方、経済面でも、安全保障を優先する政策によって、経済交流の抑制や、日本企業のサプライチェーン見直しが進む可能性がある。
しかし、すべてが対立に終始するわけではない。世界第2位と第4位の経済大国である両国は、気候変動対策やパンデミックへの対応など、国際社会共通の課題においては協力せざるを得ない。高市政権は、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の実現に向け、米国や豪州、インドなどとの連携を強化することで、中国を間接的に牽制する「多角的外交」を軸とするだろう。この多角的外交の推進こそが、高市総理のもとでの日中関係の行方を左右する鍵となる。
高市新総理は、保守層からの強い支持を背景に、外交・安保政策において妥協を許さない姿勢を示すだろう。日中関係は緊張を伴うものとなる公算が大きいが、その緊張の中で、日本は「言うべきことは言い、なすべきことはなす」という明確な外交姿勢を打ち出し、国益の最大化を目指すことになるだろう。これは、日本の国際的な地位と影響力を高める機会にもなり得るが、同時に、関係悪化を防ぐための慎重なバランス感覚も求められる。今後の高市政権の手腕が注目される。

国会議事堂/写真AC
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