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高市早苗氏の首相就任が日韓関係に及ぼす影響:歴史認識をめぐる亀裂の懸念


 

 次期総理に保守派の有力政治家である高市早苗氏が就任した場合、日韓関係に新たな緊張が生じる可能性が指摘されている。特に、韓国の李在明(イ・ジェミョン)政権との間で、歴史認識をめぐる対立が再燃し、両国関係が後退するリスクが懸念されている。今回は、高市氏の政治的スタンスと李在明政権の特性を踏まえ、両者の対立が日韓関係にどのような影響を及ぼすか考察する。

 

 高市早苗氏は、自由民主党内で保守派の代表格として知られ、靖国神社参拝や歴史認識に関する発言で国内外から注目を集めてきた。彼女は日本の過去の戦争責任について、比較的保守的な見解を持ち、歴史教科書問題や慰安婦問題で韓国側の主張に批判的な立場を取ることが多い。例えば、過去の発言では、慰安婦問題に関する「強制連行の証拠はない」とする見解を示し、韓国側から強い反発を受けたことがある。一方、韓国の李在明大統領は、進歩派の政治家として、歴史問題に対して強い姿勢を示す傾向がある。2023年の大統領就任以降、李氏は慰安婦や徴用工問題で日本に明確な謝罪と賠償を求める立場を強調し、国内の支持基盤を固めてきた。この両者の歴史認識の隔たりは、日韓間の外交交渉において火種となり得る。

 

 歴史認識をめぐる対立は、過去にも日韓関係を冷え込ませてきた。2018年の徴用工訴訟判決以降、日本企業に対する資産差し押さえ問題が浮上し、両国間の貿易摩擦や外交関係の悪化を招いた。2023年に尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権下で一時的に関係改善の兆しが見られたが、李在明政権の登場により、再び強硬姿勢を取るのではとの懸念は残っている。

 

 現在は親日姿勢を前面に出しているが、高市氏が首相に就任した場合、彼女の保守的な歴史観が李政権の親日路線を後退させ、両国間の対話が停滞する可能性もある。例えば、靖国神社参拝を強行した場合、韓国側はこれを「軍国主義の肯定」と受け取り、外交的抗議や報復措置に踏み切る可能性がある。

 

 さらに、日韓関係の後退は、経済や安全保障の分野にも波及する恐れがある。日本と韓国は、半導体サプライチェーンや北朝鮮問題での協力が不可欠であり、両国の関係悪化は地域の安定性にも影響を及ぼす。米国は日韓の協力を重視しており、米政権が仲介役を務める可能性はあるが、高市氏と李氏の強硬な姿勢が続けば、調整は難航するだろう。

 

 ただし、両国には関係改善の余地も存在する。高市氏が現実的な外交姿勢を採用し、経済や安全保障での協力を優先する可能性も否定できない。李政権も、国内経済の課題を抱える中、日本との協力が不可欠であることを認識している。歴史問題を棚上げし、実務的な対話を進めることができれば、関係悪化を最小限に抑えられるかもしれない。

 

 結論として、高市早苗氏が首相に就任した場合、歴史認識をめぐる李在明政権との対立は避けられない可能性が高い。しかし、両国が現実的な利益を優先し、対話を継続する努力を怠らなければ、関係の完全な破綻は回避可能である。日韓両国は、過去の歴史を乗り越え、未来志向の協力関係を築くための知恵が求められている。

写真AC

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プロバンスぷろばんす

これまで世界50カ国ほどを訪問、政治や経済について分析記事を執筆する。特に米国や欧州の政治経済に詳しく、現地情報なども交えて執筆、講演などを行う。

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