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「刀剣乱舞」の太刀・石切丸を所蔵する神社と「空を舞う日本最古の飛行塔」を訪ねて、いざ生駒へ!

インバウンドから逃れたい! 家族で訪ねる夏の関西歴史スポット


 

石切劔箭神社と生駒山上遊園地

大阪府(東大阪市)~奈良県(生駒市)

日帰りコース

©️歴史人

■神話と現代が交わる歴史エンターテインメント

 

 大阪と奈良の境にのびる生駒山地は、神話が今に生きる地だ。山麓の石切箭(いしきりつるぎや)神社の創建は『日本書紀』の神々の逸話にちなむ。箭の名は石をも切る霊力をあらわし、宝物館には神宝の太刀「石切丸」を所蔵する。その名に「刀剣乱舞」を思い浮かべた人が多いはず。そう、2015年の誕生以来、ゲーム・アニメ・コミカライズ・映画・演劇などで大ヒット中の、あの「刀剣乱舞」である。その人気キャラ、石切丸は石切箭神社の名刀を擬人化したもの。治癒能力を特技に優しい眼差しでみんなを見守る刀剣男士だ。

 

 神社から生駒山へは日本最古のケーブルカーで“ごとごと”登る。着いたところが生駒山上遊園地で、最古の飛行塔が舞う。標高642メートル。夏休みは、石切箭神社から生駒山上遊園地へ。生駒の深い歴史、高みから見渡す絶景を家族で楽しむ一日はいかが。

生駒ケーブルのキャラクター電車「ブル」

■大和の誕生神話と巨石伝説の古里

 

 石切箭神社へは近鉄奈良線・石切駅から石切参道商店街を抜けて行く。沿道によもぎうどん(麺が緑色)など名物いろいろ。占いの店が多いのは昔から。昭和55年(1980)造立の石切大仏も鎮座するにぎやかな門前風景の先に、やがて鳥居があらわれる。

 

 境内に入ると、本殿前にお百度を踏む人、人、人。老若男女、祈願の列が途切れない。地元の古老の話では、戦後から続く、おなじみの眺めとのこと。初めて見る人はカルチャーショックをうけるかもしれない。筆者も訪れるたびに驚いている。神社の通称は石切さん。腫れ物治しの霊験から、でんぼの神さんとも呼ばれる。でんぼは腫れ物をさす関西弁。神と人の距離がとにかく近い土地柄なのだ。

 

 社伝によると創建は2000年以上前。『日本書紀』に大和建国のため生駒山に降り立ったと記される饒速日尊(にぎはやひのみこと)とその御子、可美真手命(うましまでのみこと)を祀る。建国の戦いに臨んだ神武天皇も、天皇が空高く蹴り上げて武運を占ったと伝える巨石とともに神武社として祀られ、境内に座す。

 

 本殿、天然記念物のクスノキとともに見逃せないのが、絵馬殿の屋根上に飾られた劔と箭。絵馬殿には劔と箭を持つ二体の随神像も立つ。まさに石切を象徴する眺めだ。

石切劔箭神社、絵馬殿の屋根を飾る劔と箭(左)、絵馬殿の剣を持つ随神像(右/石切劔箭神社提供)

■神宝で重要美術品、石切丸をこの目で

 

 この数年は、神宝の太刀「石切丸」に注目が集まる。妖艶な弧を描く刀身美は平安時代の刀工・三条宗近の作。国宝に準ずる重要美術品にも指定された。2025年は石切箭神社にて、7月20日~10月22日に行われる宝物館の公開時には石切丸のパネル展示がある。7~8月は舞台「『刀剣乱舞』士伝 真贋見極める眼」も東京・大阪・福岡で順次上演され、2025年の夏は刀剣で盛り上がる。

 

 午前中を石切劔箭神社で過ごした後はひと休み。家族連れには、鳥居前の石切回廊もおすすめ。特産スイーツや健康食材の軽食メニューの店が並ぶ。休憩できるフリースペースもあるのがうれしい。参道商店街で見つけた店でランチするのもいい。

石切劔箭神社提供

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本渡 章ほんど あきら

1952年生まれ。作家・古地図コレクター。1996年、第3回パスカル短篇文学新人賞優秀賞受賞。著書に『図典「摂津名所図会」を読む』『図典「大和名所図会を読む』『古地図が語る大災害』『カラー版・大阪古地図むかし案内』『京都名所むかし案内』(以上、創元社)、『鳥観図!』『大阪古地図パラダイス』『古地図で歩く大阪ザ・ベスト10』(以上、140B)など。他に編著『超短編アンソロジー』(ちくま文庫)、共著『飛翔への夢』(集英社)など。

 

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