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陰茎の異名「作蔵」【江戸の性語辞典】

江戸時代の性語94


我々が普段使っている言葉は時代とともに変化している。性に関する言葉も今と昔では違う。ここでは江戸時代に使われてた性語を紹介していく。


 

■作蔵(さくぞう)

 

 陰茎のこと。春本・春画では、「へのこ」、「まら」ということが多い。

 図は、女が交わりながら、男の陰茎をほめているところである。

【図】女がほめる。『色能知巧左』(喜多川歌麿/寛政10年)、国際日本文化研究センター蔵

①春本『欠題艶本』(菱川派)

 

 大きなる作蔵を聞き及びて、いたずら女、言えるは、

「女と生まれて、子を産むほどに、何ほど大きくとも、受けてみたし」

 

 赤ん坊が出るくらいだから、巨根も入るはずという理屈である。

 いたずら女は、淫乱な女のこと。

 

 

②『艶女萩の露』(川島信清、享保2年頃)

 

 夫の帰りがおそく、妻が不機嫌なとき。

 

 言い訳すること無用なり。ものも言わず押し倒し、するにしくはなし。たちまち機嫌の直るものなり。夫婦いさかいのあつかい人には作蔵にしくはなし。

 

 作蔵に物を言わせ、強引にセックスをしろと言う教えである。ただし、現代の夫婦には通用しないであろう。

 

 

③春本『好色春の風』(石川豊信、宝暦10年頃)

 

 善次郎という男と、若い娘の初めての情交。

 

 善次郎にもたれかかれば、とうから胸のたくつきたる勢いなれど、かの作蔵めがいきり返るを、胸なでおろし、心をしずめ、静かに前押しまくり、つばをとろりと作蔵につけて、娘が物へ少し臨ましかくれば、

 

 

④戯作『痿陰隠逸伝』(平賀源内著、明和5年)

 

 陰茎の呼び名について、

 

 因って字(あざな)をへのこと言う。稚(いとけな)きを指似(しじ)と言い、また、珍宝(ちんぽう)と呼ぶ。形備わりて、その名を魔羅と呼び、号をてれつくと称し、また作蔵と異名す。

 

 子供の陰茎は、指似や珍宝。

 成人の陰茎は、魔羅、てれつく、作蔵などと呼ぶ、と。

 

 

⑤春本『閨中膝磨毛』(文化~嘉永)

 

 まず手をやって、さねがしらのあたりからいじり回し、くじり回せば、女は早やだくだくと出しかけ、男の首玉にしっかりと取り付いて、しきりに尻をもじもじするに、心地よしと、持ち前の大作蔵をまず入口にのぞませ、

 

 男の陰茎は大きかったので、大作蔵と称している。

「さねがしら」はクリトリスのこと。

 

 

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過去記事

永井 義男ながい よしお

1997年『算学奇人伝』で開高健賞受賞。時代小説のほか、江戸文化に関する評論も数多い。著書に『江戸の糞尿学』(作品社)、『図説吉原事典』『江戸の性語辞典』『剣術修行の廻国旅日記 』(以上、朝日新聞出版)など多数。

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