性的なサービスを提供する「男妾」【江戸の性語辞典】
江戸時代の性語92
我々が普段使っている言葉は時代とともに変化している。性に関する言葉も今と昔では違う。ここでは江戸時代に使われてた性語を紹介していく。
■男妾(おとこめかけ)
金をもらって、女に性の奉仕をする男。
二十歳すぎた陰間が男妾に転向することが多かった。
そのほか、若手の歌舞伎役者や、若い相撲取りが女に買われた。前者を「役者買い」、後者を「相撲買い」といった。

【図】へとへとになった男妾。『男女寿賀多』(歌川国虎/文政9年)、国際日本文化研究センター蔵
(用例)
①春本『風流色歌仙』(西川裕尹か)
ある上級武士の妻は陰門が大きく、夫の陰茎では満足できなかった。そこで、巨根の下男を見て、夫に願い出る。
「男妾に召し出されたく」
と、旦那さまへおのお願い、
「いかさま、男が女をめかけというて抱えるからは、女も男妾を抱えまじきものにもあらず」
夫は理解があった。
②春本『艶本葉男婦舞喜』(喜多川歌麿、享和2年)
女の要求が大きいので、男はうんざりする。
女「さあ、さあ、早く早く、ぐっと入れて。ああ、もうもう、入れぬ先から気がいき続けだ。ああ、ああ」
男「男妾もつらいものだ」
③春本『恋の千話美』(淫水亭笑山)
男妾請状(うけじょう)之事
この馬次郎と申す者、生い立ちよく存じ、たしかなる男根(まら)に御座候間(ござそうろうかん)、我ら玉茎(まら)請けに相い立ち、貴殿方へ開(ぼぼ)奉公に差し上げ候……
請状とは、保証書。
男妾に出る男について、保証人が一筆書いたのである。
もちろん、戯文である。
④春本『男女寿賀多』(歌川国虎、文政9年)
後家に雇われた男妾。後家の要求にはさすがに疲れ果て、
男「もう、今夜はお休みになさりまし。なんぼお好きでも、そんなになさると、お毒でござります」
女「ええ、この人は、なんだのう、達者そうでいて、役に立たねえ」
【図】は、へとへとになった男妾が、後家にもう勘弁してくれと願っているところ。
⑤春本『色道禁秘抄』(西村定雅著、天保5年)
先年、寺町五条辺の富家のやもめ、高給にて男妾を抱えるに、ひとりとして一カ月も勤むること能わず、逃げ去りしと聞く。
富裕な家の後家が高給で男妾を雇ったが、要求が大きすぎた。そのため、男妾はみな逃げ出したという。後家は淫乱だったのであろう。
[『歴史人』電子版]
歴史人 大人の歴史学び直しシリーズvol.4
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現代でも地名として残る吉原を中心に、江戸時代の性風俗を紹介。町のラブホテルとして機能した「出合茶屋」や、非合法の風俗として人気を集めた「岡場所」などを現代に換算した料金相場とともに解説する。