東京・佃の歴史と魅力を再発見! 徳川家康と漁民の絆が生んだ島を歩く
Mummy-D&KOHEI JAPANの遠い目症候群#01
ヒップホップグループ「RHYMESTER(ライムスター)」の兄・Mummy-Dと、「MELLOW YELLOW(メローイエロー)」の弟・KOHEI JAPAN。2人は共に音楽シーンで活躍する一方で、大の歴史好き。この度、歴史と音楽を愛する2人による連載が満を持してリスタートしました! 歴史に想いを馳せながら各地を巡る兄弟の探訪記を、どうぞお楽しみに!
記念すべき第1回の舞台となるのは、徳川家康ゆかりの地とされる東京・佃。
さて、今回はどんな歴史の名残に出会えるのか……。

兄・Mummy-D(左)と弟・KOHEI JAPAN(右)と共に、いざ歴史散策へ!
■江戸の風情を残すエリア・旧佃島へ!
(by KOHEI JAPAN)
東京メトロ有楽町線新富町駅を下車、6番出口からまっすぐ、江戸城を背に隅田川へ直進する。両側にオフィスビルが林立し、申し訳程度に緑が植えられ、風情なんてものは皆無である。
アティイ(訳:暑い)。8月初旬、午後3時を過ぎても東京都心はたまらなくアティイ。普段の俺ならコンビニで速攻酒を買い、1トリスキメながら歩くところだが、その前にやらなきゃいけないことがある。
眼前に佃大橋が迫る。本日の目的地は対岸にある佃島。さらに橋をまっすぐ行けば豊洲、さらに行けば海、という立地。橋が架けられる前は、このあたりから佃島に渡し船が出ていたらしい。ヒップホップ的に「橋」といえばやはりマンハッタンのクイーンズブリッジか? こころなしか佃大橋、クイーンズブリッジに似てなくもない(全然似てない)。
橋上に出ると、一気に視界が開ける。風が火照ったバディーを吹き抜けてゆく。だが橋の上の直射日光、すげえアティイ。しかし隅田川を見るたびに思うが、その水量と流れの力強さ、多摩川を見て育った神奈川県民はびっくりさせられる。穏やかな顔など少しも見せてくれない。

佃大橋の上から、佃島・石川島方面を眺める2人。かつてはちょうどこのあたりを、渡し船が盛んに行き交っていた。
やはりヒップホップ的に「橋」といえばJuice CrewとBDPのBRIDGEバトルは外せないよね? とか独り言をもごもご言いながら対岸を見渡す。橋の右側がもんじゃタウン月島エリア。見渡せど川べりにびっしり、マンションが牡蠣のようにへばりついている。左側も高層マンションa.k.a.タワマンがドヤ顔で林立して俺を見下ろしてやがる。クソウ、今に見てろよ! 俺だっていつかタワマンの最上階に住んでやるからな!おい!おまえら!なめんなよ1989!
で、その左側の一角に、ビルなんて立ってない、再開発なんてどこ吹く風の、明らかにレトロな佇まいが残っているエリアが見える。そして佃煮の看板がいくつか見える。うん、どう考えてもここが佃島だ。
橋を渡ればもう到着だ。BGMはやはりNASの『Memory Lane』だろうか? 「やっぱりサビのDJ Premierのスクラッチやばいよねー」とか独り言をもごもご言っていたら、みんな先に佃島に上陸していた。おーい!みんな待ってよー! 佃島へとつながる階段を急いで降りてゆくのだった……。なぜここに来たのか、何が目的なのか……そのへんはアニキ、ヨロシク!
■佃島上陸! 徳川家康と漁民の物語を追いかけて……
(by Mummy-D)
ここで書き手は弟、KOHEI JAPANから兄、Mummy-Dにバトンタッチいたしまする。この企画、「裏大河紀行」がテーマになっており、徳川家康公にまつわる、ちょっとニッチな「遠い目スポット(=過ぎ去りし歴史に想いを馳せるのにピッタリなスポット)」を紹介すべく、毎回趣向を凝らしていきたいと思っておる次第。
そして今回、我々が最初に選んだのは、東京都中央区・佃。ここには家康の江戸入り(1590年)の後に大阪から招かれた漁民の築いた人工島、佃島が、その後拡張された埋立地に埋もれる形で今も存在しております。むうう、これは近場で手っ取り早く遠い目できそうだ。どうするオレたち? 是非もなし。早速行ってみよう!
さて、まずは対岸、佃島渡船場跡から全体の規模感など把握しつつ、佃島に渡ったわたくしたちを待っていたのは、祭りの残り香でした。なんとその日、佃島築島当初(1646年)に勧請された氏神さま、住吉神社の、コロナ禍を挟んで5年振りの例大祭の翌日だったのでした。
静けさに包まれながらも、法被(はっぴ)に身を包んだ地元の皆様が後片付けやら昼間から縁台で乾杯やらしておられる様子、とても風情あったなあ……。ま、お祭り当日は取材なんてしてらんなかったろうし、しょうがないっちゃしょうがないんだけど、もうちょっとだけ早く来れば広重も描いたあの幟旗(のぼりばた)が見れたかなあなんて思うと、後悔することしきり(涙)。それでも旗を支える抱木(だき)の摩耗具合、黒光り具合を見るにつけ、歴史を感じずにはおれなかった。遠い目……。

左:ほら、遠い目をして眺めれば、幟旗が見えてくる気がする……(なお合成)。
右:抱木は、祭りが終わるとまた川の中に埋められる。「腐らないのか?」と思ってしまうところだが、これには「酸素に触れさせない」という昔の知恵があるらしい。
撮影:Mummy-D
幟旗:「名所江戸百景」「佃しま住吉の祭」より/東京都立中央図書館蔵