×
日本史
世界史
連載
ニュース
エンタメ
誌面連動企画
歴史人Kids
動画

京都の中心部にある「入りづらすぎる寺社」2選 命婦稲荷社と染殿院はなぜ行きづらいのか?

神社仏閣好きラノベ作家 森田季節の推し寺社ぶらり【第49回】


 

■ちょっと怖いイメージの命婦稲荷社

 

 今回は京都市内にある、入るのをたじろいでしまう寺社を2箇所紹介いたします。まず、1件目は命婦稲荷社(みょうぶいなりしゃ)です。こちらは鉄輪(かなわ)の井のそばにある小さなお社です。謎の井戸が出てきたと思う方もいるので説明します。謡曲の中に「鉄輪」というものがあります。自分を捨てた夫に復讐するため、貴船の神の神託によって鉄輪をかぶって鬼女となって……という話で、丑の刻参り的な内容です。鬼女が使っていた井戸というのがここで、今は水が枯れているそうですが井戸水は縁切りの力があると言われています。

 

 つまり、ホラーの舞台だから怖くて入りづらいのかと思われるかもしれませんが、ちょっと違います。京都市内の細い通りに面した入り口は一見、住宅へ続くだけの路地。しかも、引き戸を開けないと中へと進めませんし、路地の先に視線をやってもお社も井戸も見えません。よ~く見ると神社の鳥居らしき朱色が目に入るんですけどね……。

 

 路地に入ってみると右手に神社と井戸が見えてきますが、逸話を知っているからか、どことなく薄暗い感じがあります。でも、この神社が開かれた場にあったら雰囲気も台無しなのでこの入りづらい空気感が正しいのだと思います。

 

鉄輪の井(右)と命婦稲荷社

■時宗にとって超重要な染殿院

 

 入りづらい2件目は、染殿院(そめどのいん)です。京都の大繁華街の四条通からアーケードの商店街である新京極通に入ると、すぐ左手に薄暗いお寺の入り口が。お堂への参道も薄暗いのでここが何か知っていないと踏み込むのは勇気が必要ですし、そもそも気づきづらいです。事実、20年ほど前、京都に住んでいた自分は新京極通は幾度となく通っていましたが、このお寺を知ったのは寺社の本は読んでからでした。「あれ? あんなところにお寺あった?」と思ったものです。

 

 小さいお社もお堂も全国にあるでしょうが、このお堂、日本史の重要人物と関わりがあります。時宗の開祖一遍(いっぺん)はここにあったお堂に入って、賦算(ふさん)や踊り念仏を行ったとされています。賦算というのは「南無阿弥陀仏」の文字が入ってるお札を配っていくこと。このエピソード、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。時宗にとって超重要な史跡なわけです。

 

 ちなみに新京極通からも入りづらいですが、もう片方の入り口からもハードルが高いです。お堂の後ろ側に目をやると自動ドア、そしてドアの先には明らかに店舗が。このお店、四条通に面している甘栗の老舗、「林万昌堂(はやしまんしょうどう)」の本店です。つまり四条通からはお店の中を突っ切って参拝する形になるわけです。有名観光地以外の寺社にも勇気を出して足を延ばしてみませんか?

 

染殿院の入り口

 

 

 

KEYWORDS:

過去記事

森田季節もりたきせつ

1984 年生まれ、兵庫県出身。作家。東北芸術工科大学特別講師。京都大学文学部卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程中退(日本史学専修)。大学院在学中の2008年、『ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート』で第4回MF文庫Jライトノベル新人賞優秀賞を受賞してデビュー。主な著書に『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』(GAノベル)、『物理的に孤立している俺の高校生活』(ガガガ文庫)、『ウタカイ 異能短歌遊戯』(ハヤカワ文庫)などがある。

最新号案内

『歴史人』2026年3月号

新・幕末史!新選組スペシャル

幕末の寵児として華々しい活躍を見せた「新選組」は、今もなお多くの人々を魅了し続けている。近藤勇、土方歳三ら主要メンバーの生い立ちから出会い、そして箱館での終焉まで、その生き様を追う。