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歌舞伎役者と大奥御年寄の密会疑惑で江戸城が大騒ぎ! 「江島生島事件」の裏に潜んでいた陰謀

日本史あやしい話


■27年間、真相を語ることなく62歳で死去

 

 ともあれ、その後江島は、高遠藩の囲み屋敷に幽閉された。伊那市高遠町歴史博物館の敷地内にその屋敷が復元されているが、思いの外ゆったりとした造りには驚いたものであった。ただし、屋敷そのものは粗末なものではなかったものの、出入り口の脇に監視所が設けられて、参拝に行く以外の出入りは固く禁じられていたようである。晩年には多少は村人たちと接触することができたというが、それでもその間一切、大奥のことは話さなかったとか。自らの舌禍によって、月光院に類が及ぶことを恐れたからだろうか。

 

ともあれ、27年もの長き幽閉生活の後、寛保元(1741)年に61歳で死去。相方ともいうべき生島の方は、寛保元(1741)年に赦免されて江戸に戻ったものの、その翌年、73歳で死去。月光院が亡くなったのは、それから10年が過ぎた宝暦2(1752)年のことであった。事件の真相は、江島が口を閉ざしたことで、今もって闇に葬られたままなのである。

「新撰東錦絵生島新五郎之話」/東京都立中央図書館蔵

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藤井勝彦ふじい かつひこ

1955年大阪生まれ。歴史紀行作家・写真家。『日本神話の迷宮』『日本神話の謎を歩く』(天夢人)、『邪馬台国』『三国志合戰事典』『図解三国志』『図解ダーティヒロイン』(新紀元社)、『神々が宿る絶景100』(宝島社)、『写真で見る三国志』『世界遺産 富士山を行く!』『世界の国ぐに ビジュアル事典』(メイツ出版)、『中国の世界遺産』(JTBパブリッシング)など、日本および中国の古代史関連等の書籍を多数出版している。

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