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愛人が「300人」以上!? ポルトガル宣教師もドン引きした、秀吉の「女ぐるいっぷり」とは

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「女遊びは私のマネをするな」と、養子・秀次に自ら説教をしていた秀吉。イエズス会のルイス・フロイスも秀吉の「女グセ」を記録し、秀吉が囲った娘の数を「300人」とまで書いている。実際のところ、どのくらいのスキモノだったのだろうか?


 

■「女狂ひ」を自認していた秀吉

 

常泉寺秀吉公像

名古屋中村区・常泉寺に立つ秀吉公像

 

 エミー賞で18部門受賞を達成したディズニープラスのオリジナルドラマ『SHOGUN』でも、女好きの老人として描かれていた「太閤」のモデル、豊臣秀吉。

 

 史実の秀吉にも「口を吸いたい(キスしたい)」という直接的な愛情表現を書き連ねた直筆の書状が残されていることからも、相当なスキモノだったことは間違いありません。

 

 まぁ、秀吉が「キスしたい」といった相手は、彼が57歳のときに授かった「おひろい」こと後の豊臣秀頼なのですが、この手紙を幼い秀頼に読んで聞かせたのは、おそらく淀殿か、想像をたくましくすれば、淀殿同様に秀吉のお手がついた女房の誰かだったと考えられるため、結局のところは彼女(たち)への愛情表現でもあったのでしょう。

 

 興味深いことに、秀吉は自身を「女狂ひ」として認識していました。秀頼が誕生する以前、養子にしていた豊臣秀次に対し、秀吉は天正19年(1591年)に五箇条からなる訓戒状を授けました。

 

 その最後が「茶の湯、鷹野の鷹、女狂ひに好き候事、秀吉まねこはあるまじき事(「本願時文書」など)」の一文で始まる第五条で、「茶道、鷹狩、女遊びを好むことについては、私・秀吉のマネをしてはいけないよ」と説教を垂れているのには吹き出してしまいます。

 

■屋敷の中の「使い女」との浮気ならOK!?

 

 しかし、秀吉は茶道、鷹狩、女遊びのそれぞれに「この程度なら許される」という逃げ道の存在を語っており、女遊びについては、「使い女(め)」を屋敷に囲っているという原則を守れるのであれば、その女の数が(同時に)5人だろうが10人だろうが、一向にかまわないというスタンスを示しているのでした。

 

 そもそも「使い女」という存在が、淀殿(茶々)、京極竜子といった「側室」という身分を家中で正式に与えられた女性ですらないことに注目です。秀吉本人も、大量の「使い女」を免責項目といわんがばかりに抱えていたのでしょう。

 

 しかし、秀吉によると、屋敷の外に恋人を作って、彼女に会いにいくのはNGな行為でした。何がよくて、何がダメなのかの秀吉の判断基準が現代人にははっきりしませんが、貴人の屋敷の中は治外法権であった時代性を反映した言葉と考えることもできます。

 

■フロイスによれば、女性の数は300人超え

 

 そして、こうした豊臣家の「奥」事情は、イエズス会の宣教師たちにもバレバレでした。

 

 ルイス・フロイスは「彼は政庁内に大身たちの若い娘たちを三百名も留めているのみならず、訪れて行く種々の城に、また別の多数の娘たちを置いていた」とか、秀吉が地方に赴く「主な目的の一つとしたのは見目麗しい乙女を探し出すことであった」などと『日本史』に記しています。(『完訳フロイス日本史: 豊臣秀吉篇 I. 秀吉の天下統一と高山右近の追放』)。

 

 当時はすでに立派な老人だと考えられていた五十路の秀吉の「女グセ」が、彼から冷静な思考力を奪ったという鋭い分析もしているフロイスですが、イエズス会の布教に非協力的な言動を取った人物はあることないこと、ケチョンケチョンに書かれる傾向がありましたから、「絶大な権力にまかせて女性を囲いまくった秀吉」という記述も完全な真実と考えることはできません。

 

 しかしなんにせよ、秀吉が自分自身を「女狂ひ」と認めていたというのは史実なのですね。ゆえに300名とはいえずとも、それに迫る数の女性を、秀吉はコレクションしていたのではないでしょうか。そのうち、「太閤殿下と私」のような暴露手記がどこかの蔵から発掘されないかと期待してしまいます。

 

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堀江宏樹ほりえひろき

作家・歴史エッセイスト。日本文藝家協会正会員。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。 日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。最新刊は『日本史 不適切にもほどがある話』(三笠書房)、近著に『偉人の年収』(イースト・プレス)、『本当は怖い江戸徳川史』(三笠書房)、『こじらせ文学史』(ABCアーク)、原案・監修のマンガに『ラ・マキユーズ ~ヴェルサイユの化粧師~』 (KADOKAWA)など。

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