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零戦の強敵として君臨:グラマンF6Fヘルキャット

零戦と戦ったライバルたち 第4回 ~「驚異の戦闘機」零戦との死闘~


太平洋戦争序盤における米軍の主力機グラマンF4Fの後継機で、火力、防弾性、航続距離などが向上したF6Fヘルキャット。零戦の最強のライバルとして恐れられた、その実力を解き明かす。


 

 

飛行中のグラマンF6F-5Nヘルキャット夜間戦闘機。末尾の「N」の記号が夜戦を示す。主翼右端前部のふくらみはレドームで中にレーダーアンテナが収められている。夜間は日本の多発機と接触する機会が多いため、50口径機関銃の一部がより大威力の20mm機関銃に換装されていた。なお本機は夜戦のみならず昼間戦闘も行っている。

 グラマン社が前作として開発したF4Fワイルドキャットは、競合したブリュースターF2Aバッファローの「保険」だったものが、逆に主役に転じた機体だった。そして、次期主力艦上戦闘機に予定されていたヴォートF4Uコルセアが実用化されるまでのつなぎ役をはたす予定だったが、同機の開発は想定外に長引いていた。

 

 そこでアメリカ海軍は、またしてもグラマン社に「保険」の開発を依頼することになった。前作のワイルドキャットは、部隊で「グラマン鉄工場製」の渾名(あだな)を付けられるほどその堅牢性が高く評価されていたが、今回の機体も同様に、堅牢性や防御性能の向上に力が注がれた。

 

 ワイルドキャットに続いて、「つなぎ役の続編」ようになった本機はF6Fヘルキャットと命名された。そして、コルセアが装備したプラット・アンド・ホイットニーR-2800“ダブル・ワスプエンジンのせいで同機が失敗した場合に備えて、ヘルキャットは開発開始後のかなりの期間をライトR-2600“サイクロンエンジンにこだわって設計や試作が進められた。しかしコルセアの開発の過程でR-2800の信頼性が確立されたため、ヘルキャットも同エンジンを搭載することになった。

 

 2000馬力級のダブル・ワスプによってもたらされた馬力の余裕のおかげで、ヘルキャットはワイルドキャット以上に、その堅牢な構造はもとより、燃料搭載量と防弾設備、武装搭載量が増加している。

 

 開発時、斬新で冒険的な設計はほとんど導入せず、エンジンの大馬力にものをいわせた「力技」的な性能向上に重点を置いた結果、先発のコルセアよりも先に実用化されて実戦配備に至ったヘルキャットは、すでに神話的強さを示していた零戦と真っ向勝負となった。

 

 その結果、1000馬力級のエンジンを機体の軽量化で補い、運動性能を重視した設計が施されたドッグファイト(格闘戦)に強い零戦に対して、倍の2000馬力級エンジンで堅牢かつ防弾重視の重い機体を強引に引っ張るだけでなく、そこそこの格闘戦能力も備えたヘルキャットは、手強い敵となった。

 

 被弾すると炎上しやすく、その結果として墜落に至る零戦とは異なり、防弾に優れ火が付きにくいヘルキャットは、被弾多数でボロボロになりながらも帰艦した例が少なくない。また、そのような状態での緊急着艦で機体が全壊しても、「グラマン鉄工場製」の頑丈なコックピット周りのおかげで、パイロットは無傷というケースが多々あった。

 

 こうして生還できたパイロットは、自身の経験値を上げると同時に、同僚に自らの経験を伝えて部隊全体の練度の向上にも大きな役割をはたした。そしてその結果、ベテランパイロットが続々と失われ、経験不足の新人が乗るようになった零戦を、前にもまして撃墜するようになって行くのである。

 

 とはいえ、優秀なパイロットが乗る零戦は、ヘルキャットとも互角以上の戦いぶりを示している。だからこそ、常にヘルキャットと零戦は「好敵手」と評されるといえよう。

 

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白石 光しらいし ひかる

1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。

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