【行きづらい神社】県内の移動だけで6時間…電車を逃すとその日は終了、でも行く価値のある神社
神社仏閣好きラノベ作家 森田季節の推し寺社ぶらり【第42回】
※移動には公共交通機関を利用しています。
■朝に県庁所在地を出て到着は13時。遠すぎる一宮。
この原稿を書いてる人間は地元が兵庫県なのですが、瀬戸内海側の南部と日本海側の北部は同じ県でも移動にものすごく時間がかかります。真北に移動したいのに、ルートによってはほぼ大阪のほうまで行ってから北上する羽目になったりします。
山形県も県の東側にあたる内陸の米沢~山形~天童~新庄の山形新幹線が通っている南北のラインから、日本海に面した西側に出るのがとても大変です。その西側でも最北端に位置する遊佐町(ゆざまち)というところに出羽一宮である鳥海山大物忌神社(ちょうかいさんおおものいみじんじゃ)があります。鳥海山大物忌神社は本社は鳥海山の山頂にあるのですが、ここに向かうには本格的な登山になってしまうので、今回は里宮に当たる二箇所の口ノ宮を参拝します。山形市内からどれぐらい大変かご紹介いたします(2020年当時の記録なので、JR陸羽西線がバス代行になっている時期などとダイヤが異なります)。
まず、朝から山形を在来線で北上して新庄へ向かいます。ここで日本海側へ出るために陸羽西線に乗り、最上川に沿って西へ。鶴岡と並ぶ山形県の日本海側の中心都市である酒田には12時前に到着しましたが、目指す遊佐町はさらに北で、しかも1時間ほどこの先の電車がありません。結局、正午を過ぎた電車に乗車し、13時前にようやく最初の目的地、吹浦(ふくら)に到着しました。
当時のメモを見ると、「7時頭の電車に乗ったが、接続が悪く新庄で2時間待ち、酒田でさらに1時間待ち。6時前の電車に乗れなかったせいで、6時間かかるとは……」と書いてありました。接続の悪い電車に乗ったとはいえ6時間かかっています。ちなみに東京から7時頃の新幹線に乗れば約4時間で新函館北斗に着きます。東京から7時頃の新幹線で西に向かった場合、12時過ぎに博多に着きますし、みずほの接続がよければ13時になる前に熊本にも着いています。こんなにも県内移動だけで時間がかかるとは……。

吹浦口ノ宮の拝殿(手前)と本殿(奥)
まず、吹浦口ノ宮は吹浦駅から徒歩で簡単にアクセスできます。一宮らしい堂々とした風格の吹浦口ノ宮ですが、社殿の配置はなかなか特徴的。鳥居をくぐった右手奥に大きな拝殿が見えるのですが、近づいてみると拝殿の左手にまっすぐ伸びる石段が上へと続いています。この長い石段の上にもう一つ拝殿があり、その奥に本殿が祀られています。つまり、里宮自体が下のエリアと上のエリアに分かれるような作りになっているんです。下のエリアの拝殿は下拝殿(したはいでん)、上のエリアのほうはたんに拝殿と呼称するようです。まるで影武者みたいに拝殿が下のエリアにあるというのはけっこう珍しいのではないでしょうか。
続いて一駅南側に戻って遊佐(ゆざ)駅で下車。現行(2025年後半)のダイヤで13時44分の便に当たるものです。ちなみにこれの次の便は17時8分発なので、13時44分のものに乗れなかったら完全に旅は終わりです。

雰囲気のある蕨岡口ノ宮の随神門
遊佐は町の中心駅だけあってそれなりに大きい駅です。ここから6キロほどのところにもう一つの里宮に当たる蕨岡(わらびおか)口ノ宮があります。とても歩いていけないのでレンタサイクルを利用しました。蕨岡口ノ宮周辺は「〇〇坊」という名前の建物が多く残り、かつての修験の宿坊集落の雰囲気をとどめています。今でもちょっとした宗教都市のようでもあり散策が本当に楽しいです。
県庁所在地から参拝に行くのが大変な一宮ですが、それだけの価値がある二つの口ノ宮でした。

鳥海山大物忌神社の本殿。本格的な登山になります