抗日戦争勝利パレードにプーチンが参加 蜜月に見える中露関係は決して良好とは言えないワケ
2025年9月3日、北京の天安門広場で開催された抗日戦争勝利80周年記念軍事パレードは、世界の注目を集めた。中国の習近平国家主席を中心に、ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩総書記が並び立ち、最新ミサイルや戦闘機を披露する壮大な式典となった。プーチン大統領の参加は、中露関係の緊密さを象徴するものとして報じられた。ロシアのウクライナ侵攻以降、中国はロシアを支持し、経済協力が深化。両国首脳は頻繁に会談を重ね、中国はロシア産エネルギーを大量に輸入するなど、表面上は蜜月を思わせる関係が築かれている。
しかし、中露関係は決して良好とは言えない。歴史的な不信がその根底にある。19世紀、ロシアは不平等条約で中国から広大な領土を奪い、20世紀半ばのソ連時代には国境紛争が頻発。1960年代の珍宝島事件では軍事衝突まで発生した。この遺恨は今も残り、両国は互いの領土主張を警戒する。現代でも、ロシア極東地域での中国移民の増加が続き、ロシア側は人口流入を潜在的脅威とみなしている。
経済面での不均衡も見逃せない。ロシアの対中輸出は主にエネルギー資源に依存し、中国はこれを大量に輸入するが、技術力では中国が圧倒的に優位だ。ロシアは中国製のドローンや電子部品に頼らざるを得ず、経済格差は拡大。2025年現在、ロシアの経済規模は中国の10分の1以下で、プーチン政権は中国への依存を戦略的弱点と認識している。中国がロシアを経済的に支える一方、ロシアは中国による知的財産の侵害を懸念する声も上がる。
地政学的競争も両国関係を複雑化させる。中央アジアでは、上海協力機構を通じて協力するが、影響力の主導権を巡る競争が続く。中国の「一帯一路」構想は、ロシアの伝統的勢力圏を侵食し、ロシアは経済的影響力の低下を恐れる。北極圏での資源開発でも協力は進むが、中国の軍事進出をロシアは警戒。反米外交を強調する一方で、互いの野心は衝突している。
ウクライナ戦争は、この関係の脆さを浮き彫りにした。中国はロシアを公然と支持せず、中立を装いつつ、民生品として部品を輸出する慎重な姿勢を見せる。プーチン大統領は中国の曖昧な態度に不満を抱き、より深い協力を求めるが、中国は米中関係の悪化を避けるため慎重だ。両国は「パートナー」を名乗るが、真の同盟には程遠い。
軍事パレードでの共演は、対米包囲網を演出するものに過ぎない。中露は米国を共通の敵とみなすが、互いの利益が対立すれば関係は容易に亀裂が入る。歴史的・経済的・地政学的な緊張は、蜜月の仮面の下に潜む。真の信頼が欠如した関係は、国際情勢の変動で崩壊するリスクを孕む。中国の台頭とロシアの衰退が、この不均衡をさらに助長するだろう。

天安門広場/写真AC