謎だらけの古代史を解明する新発見! 発見され続ける遺跡と古代史研究の最前線
日本列島には全部で約46万カ所以上の遺跡があるといわれていますが、毎年のように新たな遺跡や古墳が発見され続けています。
宅地開発などが進むと未知の遺跡が発見されることがありますし、検査機器の発達によって新たな事実が判明することもあります。最近も発見が相次いでいますので、そんな中からいくつかをピックアップしてみましょう。
〇2025年5月、広島県廿日市市の冠(かんむり)遺跡で発見されていた旧石器が、最新年代測定で奈良文化財研究所は4万2300年前の旧石器時代後期以前の尖頭器(せんとうき)だと発表しました。
旧石器研究は2000年11月5日の毎日新聞の証拠写真入りスクープで、原人時代に及んだ遺物捏造事件が暴露されて、捏造者の関わったそれまでの研究がすべて信頼を失い、旧石器遺跡そのものの再検討を余儀なくされました。日本列島の前期・中期の旧石器遺跡調査報告がすべて一旦キャンセルされて再確認に時間を取られ、旧石器研究の20年間が失われたともいわれました。日本列島で確実な旧石器は後期旧石器(3万年前程度)以降のものだと考えざるを得なくなったのです。
その経験を反省し、旧石器研究は慎重に慎重を重ねて遺物の年代が推定されています。そのうえで今回の尖頭器は同じ地層から検出された植物遺物などの炭素14年代測定法などで、後期旧石器以前の中期遺物の可能性があると発表されています。この研究成果で日本列島に人類が到達した年代が大きく遡る可能性が出てきました。
〇古墳の総数は全国でコンビニエンスストアの3倍の数、約17万基あるといわれていますが、毎年古墳は発見されています。
2025年3月1日のニュースでは、奈良市の平城宮跡北側に広がる佐紀盾並(さきたたなみ)古墳群のコナベ古墳の南側に、破壊された大型前方後円墳が発見されて「佐紀池ノ尻(さきいけのじり)古墳」と命名されました。
平城京を造営するためにいくつも古墳が破壊されていることは明らかですが、墳丘長が200mに及ぶと推定される巨大な前方後円墳の削平痕が発見されたのは驚きです。この発見は、飛鳥・奈良時代の王朝人が古代の大古墳をどの程度尊崇して祭祀が続けられていたのか? 誰の墓なのかがわかっていたのかどうか? に重大な疑問を呈する状況ではないかと考えさせられます。
〇同じく今年4月のニュースで、文化財保存新潟県協議会の発表では、新潟県の佐渡島で全長が30m程度の中型前方後円墳2基が初めて発見されています。時代は空白の4世紀と推定されていて、大和王権が日本海沿いに活発な活動をしていた証拠と考えられています。
〇2024年の発見にはユニークなものもありました。
滋賀県近江八幡市の日野川の水中で発見された5世紀後半から6世紀前半の江頭南(えがしらみなみ)遺跡の古墳は貴重な発見でした。元々は2019年にバードウォッチングをしていた近所の方が、川の中に埴輪があるのを発見したことから調査が始まりました。
発見された埴輪は一列に並んだ6基の円筒埴輪で、ここに古墳があるという事を示していました。築造当時の琵琶湖の水位は今よりも低かったので、元々地上に築造された古墳が後の時代に水没し、土砂に埋められたという事が判明しました。河川の改修工事や近年の豪雨で遺跡がチラ見えしたようです。

参考/円筒埴輪(今城塚古代歴史館展示)
古墳時代を通して最も多く製造された土管のような埴輪で、古墳の年代確定に大きな役割を果たす遺物。
撮影:柏木宏之
〇徳島県でも昨年までの調査で海部野根(かいふのね)道路事業計画の事前調査で前方後円墳1基を含む全部で5基の未知の古墳を発見しています。この古墳群は多良(たら)古墳群と名付けられています。
〇そして2025年5月4日のニュースでは、大阪府の古市古墳群最大の誉田御廟山古墳(こんだごびょうやまこふん/応神天皇陵古墳)の広大な前方部に石室を覆う一段高く土盛りされた区域を発見しています。底面が一辺約40mで上面の一辺が約20m、高さは約8mという巨大な方形構造物です。
実は1934年の室戸台風で墳丘に被害が出て、その時に巨大な竪穴式石室の天井石が前方部に露出したので調査されました。この時の未公開だった調査報告書が宮内庁から公開されたそうで、今回の発見を裏付けます。これは天皇陵での唯一の近代的な調査報告だそうですが、堺市の百舌鳥古墳群にある大仙陵古墳(だいせんりょうこふん/仁徳天皇陵古墳)の前方部にも竪穴式の石室がいくつか発見された明治時代の記録があります。その時に出土した鎧の欠片と鞘(さや)に入った刀子(とうす)が市中で発見されて、先日大きなニュースになったところです。
今回、立ち入りを禁止されている天皇陵をどのように調査したのかというと、飛行機を飛ばして、上空から精密なレーザー観測をした成果だったのです。これからも各地で新発見が相次ぐことと期待できます。

誉田御廟山古墳/写真AC