「黄表紙」の先駆者・恋川春町の生涯
蔦重をめぐる人物とキーワード⑲
5月18日(日)放送の『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第19回「鱗(うろこ)の置き土産」では、鱗形屋孫兵衛(うろこがたやまごべえ/片岡愛之助)が店じまいするにあたり、お抱えの人気作家・恋川春町(こいかわはるまち/岡山天音)を耕書堂に引き込もうとする蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう/通称・蔦重/横浜流星)の様子が描かれた。蔦重を毛嫌いする春町の勧誘は無謀に思えたが、意外な人物が協力を申し出たのだった。
■人気作家・恋川春町を耕書堂に引き込む

恋川春町が絵と文を手掛けた黄表紙『金々先生栄花夢』の一幕(国立国会図書館蔵)。描かれているのは、主人公の金兵衛が眠りにつき、夢を見る場面。マンガの吹き出しのようになっている部分が夢の中の表現となっている。
鱗形屋の閉店にともない、お抱えだった流行作家の恋川春町は、今後は鶴屋喜右衛門(つるやきえもん/風間俊介)のもとで作品を発表することになった。蔦重は春町に耕書堂でも書いてほしいと頼んでみたものの、取り付く島もない。
蔦重と懇意にしている作家の朋誠堂喜三二(ほうせいどうきさんじ/尾美としのり)は春町とも親しいが、二人の人気作家の性格はまるで逆で、鷹揚(おうよう)な喜三二に対し、春町はいたって真面目な人物だった。春町は、何でも金で解決しているように見える蔦重の姿勢が気に食わないらしい。
それから数か月後、春町は新作を生み出せずに苦悩していた。鶴屋からは「作風が古い」と一刀両断され、かつての当たり作『金々先生栄花夢』の焼き直しを書いてみてはどうか、と提示されたが、春町の気は乗らない。
このままでは春町の才能が潰れてしまうと案じた鱗形屋は、商売敵だった蔦重に「春町を鶴屋からかっさらってほしい」と密かに懇願。これを受けて蔦重は、鱗形屋や吉原の人々を巻き込み、春町の次に書くべき作品の構成を考案し、春町に売り込んだ。蔦重らが練りに練った構成案に、春町の心が突き動かされた。
その結果、春町は鶴屋を離れ、蔦重のもとで書くことを決意。鱗形屋は、蔦重との交流を経ることで長年のしがらみも霧散し、蔦重と和解したのだった。