江戸の「秩序」を担った奉行所
蔦重をめぐる人物とキーワード⑭
4月6日(日)放送の『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第14回「蔦重瀬川夫婦道中」では、蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう/通称・蔦重/横浜流星)が本屋の開店を決意する様子が描かれた。鳥山検校(とりやまけんぎょう/市原隼人)と離縁した瀬川(瀬以/小芝風花)とともに、新たな暮らしを夢見る蔦重だったが、思いもかけない結末が待っていた。
■蔦重と瀬川の長い初恋がついに実る

東京都千代田区の有楽町駅前にある南町奉行所跡。南町奉行所の所在地は時代によって変遷があるが、1806(文化3)年以降は数寄屋橋門外に固定された。北町奉行所とともに、町人にまつわる行政や立法、司法、治安など多岐にわたる業務を管轄した。
瀬川が鳥山検校に問い詰められている頃、蔦重は鳥山の屋敷へ向かっていた。屋敷に到着すると、瀬川が鳥山とともに同心に連れられていくのを目撃した。引き留めようと食い下がったため、蔦重も捕らえられた。
大番屋で蔦重は、瀬川が座頭金への関与を疑われていると知る。心づけを頼んだのは自分だと証言して瀬川をかばうが、蔦重の目論見は当てが外れ、お咎めなしで解放された。
その後、鳥山は入牢。瀬川は松葉屋の預かりとなった。ちょうどその頃、蔦重は、大文字屋(伊藤淳史)の勧めで本屋の開店を決意していた。そこで蔦重は、本屋を一緒にやらないかと瀬川に持ちかける。二人は、ともに働く楽しい日々を思い描いた。
そんななか、体調を崩した松崎(新井美羽)という女郎が松葉屋に運び込まれる。松崎は座頭金で両親を亡くした武家の娘で、座頭を取り仕切る当道座の上層部である鳥山と、その妻である瀬川を恨んでいた。恨みが抑えきれなくなった松崎は、ある日、包丁で瀬川に襲いかかった。命に別状はなかったが、瀬川は顔と手にケガを負う。
この頃、大文字屋が神田に買った屋敷の取引が、町名主の反対で取り消されるという騒動が勃発。その上、奉行所から吉原者には見附内の土地を売らないようお達しが出ることとなる。吉原の人々はこの裁きに衝撃を受け、怒りを覚えるのだった。
その後、瀬川は奉行所で鳥山との離縁を言い渡される。晴れて自由の身となった瀬川を迎えた蔦重だったが、年が明けて松葉屋へ行くと、瀬川の姿が消えていた。吉原が苦境に立つ今、自分は蔦重の夢の邪魔になると考え、「あんたにはそこで日がな一日、夢を見続けてほしい」という文を残し、去っていたのだった。