江戸庶民から「反感」を買った鳥山検校
蔦重をめぐる人物とキーワード⑧
2月23日(日)放送の『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第8回「逆襲の『金々先生』」では、一線から退いていた鱗形屋孫兵衛(うろこがたやまごべえ/片岡愛之助)が復帰する様子が描かれた。市中の人々を夢中にさせる青本を引っ提げての復活だっただけに、蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう/通称・蔦重/横浜流星)が希望していた地本問屋の仲間入りは絶望的となったのだった。
■地本問屋の蔑みに吉原の大物たちが激怒する

『人倫訓蒙図彙』に描かれた検校(国立国会図書館蔵)。当道座に検校、別当、勾当、座頭といった職制が定められたのは室町時代との説がある一方、階級が16階73刻と細かく分かれたのは江戸時代から、という説が有力だ。
蔦重の吉原細見『籬の花(まがきのはな)』は、地本問屋の仲間入りを果たすための条件である倍の売上という目標を達成した。『籬の花』で花の井(小芝風花)が瀬川の名跡を襲名したことを知った人々は、その姿をひと目見ようと吉原をこぞって訪れ、花の井は目の回るような多忙な日々を送っていた。蔦重と瀬川は、吉原の盛況を牽引する存在となっていた。
そんななか、盲目の富豪である鳥山検校(とりやまけんぎょう/市原隼人)が瀬川の客としてつく。瀬川は、検校からの贈り物である本のなかに、青本『金々先生栄花夢』を見つけ、鱗形屋孫兵衛が版元として復活したことを知った。
この本は、孫兵衛が奉行所に捕縛される直前まで蔦重とともに話の筋を考案したもので、本をあまり読まない次郎兵衛(中村蒼)も夢中にさせるおもしろさだった。鱗形屋の版元としての復活は、蔦重の地本問屋の仲間入りを難しくすることを意味していた。
案の定、地本問屋を取りまとめる鶴屋喜右衛門(つるやきえもん/風間俊介)らが吉原に乗り込んできて、蔦重の仲間入りを白紙に戻すことを吉原の主人たちに通達してきた。言葉の端々に吉原者を蔑(さげす)むものを感じた駿河屋市右衛門(するがやいちえもん/高橋克実)は、喜右衛門を座敷から引きずり出し、階段下へ放り投げた。吉原の主人たちは、吉原への出入り禁止を地本問屋たちに告げ、対立する姿勢を明らかにしたのだった。
- 1
- 2