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実戦で初めて戦車を運んだグライダー、ゼネラルエアクラフト・ハミルカー(イギリス)

第2次大戦グライダー物語 第5回 ~空飛ぶ精鋭部隊を運ぶ沈黙の輸送機~

飛行性能と安全性に優れた大型機

機首部分を開けてアメリカ製のM22ローカスト空挺戦車を降ろしているゼネラルエアクラフト・ハミルカー。胴体側面に見える主脚は気圧式ショックアブゾーバーを備えており、機首開口部から車両を乗り降りさせる際には、写真のようにショックアブゾーバーの空気を抜いて機首下げの姿勢にすることができた。

 エアスピード・ホーサ強襲グライダーを成功させたイギリス空挺軍団は、より大型の兵器を空から戦場に運び込むことを考えた。例えば、ホーサに搭載できる6ポンド対戦車砲よりも強力な17ポンド対戦車砲や、武装を施したエアボーン・ジープ(空挺部隊用武装ジープ)よりも強力な軽戦車などを空輸しようというのだ。

 

 この大型グライダーは航空省の要求性能仕様X.27/40に準じてゼネラルエアクラフト社が設計を行った。初飛行は1942327日で、飛行性能は優れていた。

 

 機体は木製で、動翼は木製フレームに羽布(はふ)張りであった。車両などの自走可能な大型の荷物を搭載するため主翼は高翼式で、機首部分全体がヒンジで右に開くようになっていた。そして積み降ろしの利便性と緊急着陸時のパイロットの安全性を確保するため、コックピットは機体の2階部分ともいうべき上部に設けられており、そこにパイロットとコパイロットの2名が搭乗した。

 

 ハミルカーは最大で約7tまでの貨物が搭載可能で、具体的には17ポンド対戦車砲とその牽引車に砲手チーム、あるいはブレンガンキャリアー2両、あるいはイギリス製のテトラーク軽戦車またはアメリカ製のM22ローカスト空挺戦車1両のいずれかを積んだ。映画「史上最大の作戦」で有名なノルマンディー上陸作戦で、イギリス第6空挺師団はテトラーク軽戦車を本機で運び、世界で初めて実戦で戦場に空から戦車を投入するという快挙を成し遂げている。

 

 だがハミルカーはアメリカのボーイングB-17フライングフォートレス4発重爆撃機に等しい大型の機体であったため、第二次大戦中のイギリス機で本機を曳航できたのはハンドレページ・ハリファックス4発重爆撃機だけであった。そのような理由があったので、結局、本機は412機が生産されたに過ぎなかった。

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白石 光しらいし ひかる

1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。

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