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25ポンド砲(イギリス):「われわれの8.8cm砲」と呼ばれた傑作野砲

第二次大戦野砲物語 第1回 ~味方の窮地を救う、空から降り注ぐ砲弾の鉄槌~

対ドイツ戦で威力を発揮した22ポンド砲

1942年7月、北アフリカ戦線の激戦地エル・アラメインで砲撃中のオーストラリア軍の25ポンド砲。左側の砲の後ろに見える四角い箱状のものはリンバーと呼ばれる弾薬運搬トレーラーで、砲が最後尾、リンバーがその前というタンデム状態で牽引された。

 第一次大戦後、イギリス陸軍はそれまで装備していた直射野砲の18ポンド砲と、曲射榴弾砲の4.5インチ砲を統合することにした。

 

 その理由はふたつあった。ひとつは、砲の種類を減らせば、砲弾などその砲に関連するさまざまな物品も減らすことができ、コストカットと合理化が図れる点。もうひとつは、砲の種類が減ることで操作する砲兵の訓練も簡略化できる点である。

 

 25ポンド砲は1930年代中頃に生産が開始されたが、旧式の18ポンド砲の砲身の内側をわずかに削って25ポンド砲弾を発射できるようにした、18ポンド砲身改良25ポンド砲も造られている。

 

 この25ポンド砲が配備されたのは、主に師団隷下の砲兵科の野戦砲連隊で、配備当初から評判の良い傑作野戦砲だった。近代的な開脚砲架ではなく、一見では旧式な固定脚箱型砲架を備えており、その下にターンテーブルが取り付けられていた。

 

 ところがこの砲架は、牽引姿勢と射撃姿勢それぞれへの移行が素早く行えるうえ、射撃姿勢をとってターンテーブルをセットすると、360度全周旋回が可能になるという優れた設計だった。

 

 速射性を向上させると同時に、弾薬の取り扱いを容易にするため、砲弾と薬莢が分離している半固定弾方式を採用。射距離を延伸させる場合は、薬莢内に発射薬の薬嚢を追加することができた。

 

 薬莢が用いられているので閉鎖機は鎖栓式閉鎖機で、直接照準射撃でも、間接照準射撃でも、優れた性能を示した。

 

 主に間接照準射撃に用いられたが、イギリス軍に強力な対戦車砲の手持ちが少なく、しかも射界が開けた北アフリカでは、時に徹甲弾を用いて対戦車戦にも従事。ドイツ戦車の装甲強化が進むにつれて威力が心許なくなっていた2ポンド砲に代わって、敵戦車と一騎打ちする機会も少なくなかった。

 

 北アフリカの戦いでは、ドイツが8.8cm高射砲で水平射撃を行い、強力な対戦車砲代わりに利用したことが有名だが、実はこの25ポンド砲の砲腔口径も約88mm(正確には87.6mm)だったため、イギリス兵たちはジョークで「われわれの8.8cm砲」と呼ぶこともあったという。

 

 優秀な砲であることから、戦後も長らく使い続けられ、イギリスでは1960年代まで現役だった。また、アイルランドのように現在も予備兵器として保有している国もある。

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白石 光しらいし ひかる

1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。

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