【光る君へ】「あなたと殿はいつからなの?」倫子に戦慄! 史実でも修羅場があった? 『紫式部日記』に描かれた女性陣の姿とは?
日本史あやしい話
NHK大河ドラマ『光る君へ』。12月8日に47話「哀しくとも」が放送された。旅から戻ったまひろ/紫式部(吉高由里子)は、道長(柄本佑)の妻・倫子(黒木華)と対面。倫子が「あなたと殿はいつからなの?」「私が気付いていないとでも思っていた?」と微笑むシーンに反響が集まった。各回、キャストの演技に賞賛の声があがる本作だが、史料の人物像を踏まえると、キャストのハマり具合はどの程度なのだろうか? 今回は女性陣を中心に、紫式部の周辺の人物の史実での姿を紹介してみたい。
■紫式部は日記の中で「宰相の君」の寝顔を称賛

紫式部(鳥居清長筆:ColBase)
同僚の女房たちの容姿が事細かく記録されている『紫式部日記』をもとに、紫式部のまわりにいた女性たちについて見ていこう。
ここでの美女の筆頭と言えるのが、道長の兄・道綱の娘で、「宰相の君」と呼ばれた豊子。この女性、上臈(じょうろう)女房という、彰子に仕える女房中最上位に位置する、えら〜い女性であった。なんだか強面を想像してしまいそうだが、賞賛されるほどの美しさだったとか。
顔は「にほひをかしげなり」というから、愛らしい女性でもあったのだろう。スタイルは「らうらうしく」「ふくらか」と言い表されるところからすれば、この時代にあっては、美女の条件を兼ね備えている。
紫式部も日記の中で、宰相の君の昼寝姿の美しさを讃えており、ドラマでは、瀬戸さおりさんが演じている。
■彰子についてはどう描かれた?
また、紫式部の親友であった小少将は、ドラマでは福井夏さんが演じているが、「いとうつくしげ」で「そこはかとなくあてになまめかしう」というから、子供っぽいとは言いながらも、奥ゆかしく優美で上品だったのだろう。ただし、この頃の「なまめかし」には、今日想像できるような妖艶さは含まれていなかったことも頭に入れておきたい。
紫式部が仕えた彰子にも目を向けておこう。ドラマでは、見上愛さんが演じている。こちらは、「面やせて」「若くうつくしげなり」という。肌もスベスベと「きよらなるに」と、透き通るように美しかった。
現代人の美の観点からすれば、今風のモデルのような女性だったのかもしれない。もちろん、髪もふさふさとしていたと記されているから、当時の美女の条件をも兼ね備えていた美女であった。
■倫子から紫式部に、「老化してる」と指摘も?
ちなみに、作者である紫式部の容姿は不明であるが、倫子(ドラマでは黒木華さんが演じている)とのあるエピソードが『紫式部日記』に記録されている。
倫子から紫式部に対し、菊の綿をプレゼントしたというエピソードである。倫子から「いとよう、老い拭ひ捨てたまへ(これで老化を拭き取って捨てなさい)」と伝言があったというから、そのころ顔のシワはある程度見られたのかもしれない。
なお、紫式部は倫子に対し、「菊の露 若ゆばかりに 袖触れて 花のあるじに 千代は譲らむ」と歌を詠み、「倫子さまこそ、それを使っていつまでもお若くいてください」と綿を返している。