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アメリカの殊勲艦エンタープライズ SFドラマ「スタートレック」の宇宙船のモデルになった軍艦


太平洋戦争の苛烈な緒戦を戦い抜いた軍艦のなかには、戦功をあげた殊勲艦が多数存在する。『歴史人』9月号では日本海軍の艦艇について徹底特集したが、今回は“こぼれ話”としてアメリカ海軍が世界に誇った空母「エンタープライズ」についてご紹介する。


■激戦の太平洋戦争を生き抜いたアメリカ海軍の誇り

 

 太平洋戦争において、日本海軍に殊勲艦が存在したように、アメリカ海軍にもまたそのような軍艦は存在した。なかでも特に有名なのが、空母エンタープライズ(艦籍番号CV-6)である。アメリカ海軍におけるエンタープライズの名を与えられた7代目の本艦は、ヨークタウン級空母の2番艦として、太平洋戦争開戦以前の1938512日に就役。同戦争を最初から戦った同型艦3姉妹のうち、ネームシップのヨークタウンと3番艦のホーネットはうち続く激戦の渦中で戦没したが、本艦だけは終戦まで生き残った。

 

 日本軍の真珠湾攻撃時、エンタープライズは第8任務部隊の旗艦として、かのハルゼー提督が座乗し輸送任務と演習で洋上に出ていたため被害を免れた。19424月には日本本土初空襲を実施したホーネットを護衛。続く6月のミッドウェー海戦では、日本の南雲機動部隊の空母4隻を壊滅させた一翼を担った。

 

 熾烈な戦いでアメリカの空母が次々と沈んで行く戦況下、エンタープライズもまた、実に15回もの大小の損傷を蒙った。しかしその都度修復されて、大海原の戦場へと舞い戻っている。かような背景から、日本海軍は誤認により実に9回も、エンタープライズを撃沈したと発表した。

 

 エンタープライズは、その現役期間中に20回の戦闘に参加した軍艦として、20の従軍星章を授与されているが、これは第二次世界大戦に参加したアメリカ軍艦で最多の受章であった。有名艦だけに「ビッグE」、「ラッキーE」、「グレーゴースト」、「ギャロッピングゴースト」といったあだ名でも知られる。

 

 戦後は1947年に退役し解体されたが、その名は1961年に就役した世界初の原子力空母、アメリカ海軍8代目のエンタープライズ(艦籍番号CVN-65)に引き継がれたものの、同艦も2012年に退役。

 

 しかし、現在建造中のアメリカ海軍最新のジェラルドR.フォード級原子力空母の3番艦(艦籍番号CVN-80)が、9代目のエンタープライスと命名されることが決まっているようだ。

 

 なお、日本でも人気のSFドラマ「スタートレック」の「主演」の宇宙船の艦名もエンタープライズであり、ちょうどわが国の「宇宙戦艦ヤマト」と同じように、エンタープライズの名は、アメリカでは有名な軍艦名となっている。

「エンタープライズ」(CV-6)は、太平洋戦争中の主要な海戦のほぼ全てに参加して数多くの戦果をあげた。

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白石 光しらいし ひかる

1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。

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