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過去にもあった万博トラブル 「1200億円の大赤字」や「殺人事件」も… その黒歴史とは?

世界の中の日本人・海外の反応


4月に開幕した大阪万博。海外の文化財や食事が楽しめる場として称賛されつつ、メタンガスや爆弾騒ぎ、警備員の土下座事件など、トラブルもたびたび取り沙汰されている。今回は、過去の万博のトラブルの歴史を振り返ろう。


 

■過去にあった「カオスな万博」たち

 

大阪万博の木造リング【2024/12】

「チケットが売れない」「大行列」「飲食が何でも高い」「屋根が少ない」「虫が多い」「空飛ぶクルマの部品が落下」「ゲート前でネットがつながらない!」「毎回ログインとワンパスワードを入力しなければならないのが面倒臭い」……。

 

 開幕前から何かと言われてきた2025年大阪万博は、いざ開幕してからも何かと話題を振りまいている。総括するには早すぎるが、過去の万博もすべてが成功したわけではなく、開催中に事件が起きたこともあれば、大赤字に終わったこともあった。今回はそんな万博の黒歴史に焦点を当ててみよう。

 

■万博の混乱の中、「連続殺人鬼」が出没

 

 万博こと万国博覧会は1798年のフランスに始まる国内博覧会をその前身とし、第1回の国際博覧会が開催されたのは1851年のこと。場所はイギリスの首都ロンドンだった。

 

 その後は北米、オセアニアでも開催され、1893年にはアメリカの内陸部、イリノイ州シカゴでの開催となるが、国内外から人が押し寄せれば、既存のホテルだけでは収容しきれない。そのため多くのホテルが急ピッチで新設され、万博の会場から3マイルほど西に位置した「ワールズ・フェア・ホテル」もその1つだった。

 

 万博中は人の出入りが激しく、観光客を狙った窃盗事件も多発したため、警察は大忙し。失踪人の捜索願が出されても、腰を据えて捜査に取り組む余裕などなく、それを見透かしたかのように犯行を重ねたのが、アメリカ史上最初のシリアル・キラー(連続殺人鬼)とされるヘンリー・ハワード・ホームズこと、本名ハーマン・ウェブスター・マジェットだった。

 

 被害に遭ったのはホームズが経営するワールズ・フェア・ホテルの宿泊客たちで、1940年代に発行されたゴシップ誌は被害者の総数を200人としているが、この数字には何ら根拠がなく、殺人と死体遺棄が立証されたのは9件のみ。これでもシリアル・キラーと呼ばれるに十分な数字だった。

 

■「太陽の塔」に159時間、立てこもり

 

 華やかな万博の陰で起きていた連続殺人。これに比べるとだいぶ地味だが、1970年に開催された大阪万博では、シンボルマークとして建てられた「太陽の塔」の目の部分に、赤軍を自称する男が159時間にもわたり籠城する事件が起こり、アイジャック事件とも目玉男事件とも呼ばれた。

 

 目玉男は凶器はおろか、水や食料さえ用意していなかったため、体力の尽きたところで、あっさり御用となった。途中でゴールデンウィークに入ったこともあって、大いに世間を騒がせたが、組織的な背後関係はなく、単なる悪ノリであったことがわかっている。

 

■見通しの甘さで大赤字になったハノーヴァー万博

 

 そのほか、2000年にドイツで開催されたハノーヴァー万博は来場者が集まらず、総工費約4000憶円とは別に、約1200憶円の赤字を出したことで名を残した。

 

 失敗の要因として、事前㏚の不足、エンタメ性の欠如、チケット価格が高すぎたこと、過大な想定来場者を元に収支計画を立てたことなどが挙げられており、実際、最終的な来場者は当初目標の4000万人に遠く及ばない、1810万人に留まった。

 

 今回の大阪万博はハノーヴァー万博の失敗を前車の轍としたはずなのだが、果たして結果はどうか。新たな黒歴史にならないことを祈りたい。

 

 

 

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島崎 晋しまざき すすむ

1963年東京生まれ。立教大学文学部史学科卒業。旅行代理店勤務、歴史雑誌の編集を経て、現在、歴史作家として幅広く活躍中。主な著書に『歴史を操った魔性の女たち』(廣済堂出版)、『眠れなくなるほど面白い 図解 孫子の兵法』(日本文芸社)、『仕事に効く! 繰り返す世界史』(総合法令出版)、『ざんねんな日本史』(小学館新書)、『覇権の歴史を見れば、世界がわかる』(ウェッジ)など多数。

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