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韓国の次期大統領選挙で日韓関係はどうなる? 李在明氏の動向を中心にみる韓国情勢

 韓国の次期大統領選挙が2025年6月3日に迫り、その結果が日韓関係に大きな影響を及ぼす可能性が高い。尹錫悦前大統領の罷免に伴う今回の選挙では、最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)氏が世論調査で支持率トップを独走しているが、彼の過去の反日的な言動と最近の現実路線へのシフトが注目を集めている。今後の日韓関係は、李氏の政治的スタンスと国際情勢の変化に大きく左右されるだろう。

 

 李在明氏はこれまで、慰安婦問題や元徴用工問題で日本に強硬な姿勢を示し、「日本は敵性国家」との発言もあったとされる。これが日本国内で「反日政治家」としてのイメージを強め、日韓関係の悪化を懸念する声が多い。実際、2022年の大統領選では、彼の対日強硬姿勢が日本メディアで大きく取り上げられ、韓国国内でも一部の反日感情を煽る戦略が見られた。しかし、最近の李氏は「私は日本への愛情がとても深い」と発言し、韓米日協力の重要性を強調するなど、対日姿勢を軟化させている。これは選挙戦での戦略的な軌道修正と見られ、韓国の経済や安全保障における日本の重要性を認識した現実的な判断の表れだろう。

 

 尹錫悦政権下では、元徴用工問題の解決策や日韓シャトル外交の復活により、日韓関係は「戦後最悪」から大きく改善した。2023年には韓国大統領の訪日が12年ぶりに実現し、両国は経済・安全保障面での連携を深めた。しかし、李氏が大統領に就任した場合、この進展が後退するリスクは否定できない。特に、韓国国内の反日感情や歴史認識問題が再燃すれば、両国間の信頼関係が揺らぐ可能性がある。一方で、李氏が「実利の人」として知られるように、彼の政策は国民の支持や国際環境に応じて柔軟に変化する傾向がある。専門家の中では、李氏が反日を信念とするよりも、選挙での支持拡大や韓国の国益を優先する可能性とあるとの指摘も根強い。

 

 国際環境も日韓関係に影響を与える。米国のトランプ政権が在韓米軍の縮小や撤退を示唆する中、韓国は日本との安全保障協力の重要性を再認識せざるを得ない。北朝鮮の脅威や中国の影響力拡大を考えれば、日韓の連携は不可欠だ。李氏が大統領になれば、国内の反日感情を抑えつつ、日本との協力を模索する現実路線を取る可能性も十分にあろう。ただし、選挙戦でのポピュリズムや党内左派の影響で、対日政策が一貫性を欠くリスクもある。

 

 日韓関係の今後は、2025年が国交正常化60周年という節目の年であることも考慮する必要がある。尹政権下で計画されていた記念行事は不透明だが、新政権がこの機会を活用し、関係強化を図る可能性もある。日本側としては、感情的な対立を避け、経済や安全保障での協力を軸に、冷静かつ長期的な関係構築を目指すべきだ。李在明氏の動向次第では、日韓関係は新たな局面を迎えるだろう。

写真AC

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プロバンスぷろばんす

これまで世界50カ国ほどを訪問、政治や経済について分析記事を執筆する。特に米国や欧州の政治経済に詳しく、現地情報なども交えて執筆、講演などを行う。

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