改ざんされた天皇の歴史 なぜアマテラスが「最高神」になったのか? 支配のための「もくろみ」とは
日本史あやしい話
■アマテラスは先住民族の神であり、タカミムスヒは北アジアからの渡来神?
この謎解きにヒントを与えてくれるのが、松前健氏が著した『日本の神々』である。中でも、同書に記された民俗学者・岡正雄氏の説が興味深い。岡氏によれば、アマテラスとは本来、「南方系(東南アジア系稲作民)の先住母系種族の太陽女神・農耕母神」で、タカミムスヒは「北方系(北アジア系遊牧民)の侵入父系種族の天神」だったという。
つまり、アマテラスを祀る南方系の農耕民族が住んでいたところに、タカミムスヒを祀る北方系遊牧民がやってきて、これを支配したというのだ。
となれば、当初支配者側がタカミムスヒを皇祖神として堂々と祀っていたものの、被支配者である農耕民族たちを統制するのに、彼らが祀っていたアマテラスの名を無視することが憚れたのではないか? その葛藤が、『日本書紀』における両神の奇妙な動向に表れているという訳である。
■支配のために、土着のアマテラスを国家神にした?
『アマテラスの誕生』を著した溝口睦子氏も同様の見方をしているようで、天皇に直属する勢力(連や伴造)によって信奉されてきたタカミムスヒよりも、広範囲の人々に親しまれてきた土着の太陽神・アマテラスを国家神として掲げるほうが得策だったからではないかと指摘している。
注目すべきは、それを目論んだのが天武天皇だったとの見解である。「新しい国づくりに挙国一致で向かう万全の体制を整える」ため、皇祖神の転換を図ったのだとか。加えて、タカミムスヒが朝鮮半島系の外来神であったことも大きく作用しているとも。
新羅と繋がりのある神よりも、日本固有の神を国家神として掲げた方が効果的だったからというのだ。アマテラスを宮中から遠ざけたのも、本来の皇祖神ではなかったとなれば、当然というべきだろうか。

福岡県朝倉市周辺には、タカミムスヒを祀る高木神社が数多く点在している。それが何を意味しているのかも気になるところだ/撮影・藤井勝彦
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