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神功皇后はほんとうに朝鮮半島を“征伐”したのか? 天皇による「華々しい戦果」のウソ【古代史ミステリー】

日本史あやしい話


『日本書紀』に神功皇后の事績として華々しく記された「三韓征伐」。新羅や百済ばかりか、強国・高句麗までもが「倭国の勢威を恐れて降伏した」ことになっている。しかし、それって本当のことなのだろうか?


 

■皇后の「華々しい事績」への疑念

 

神功皇后と応神天皇と思しき宇美八幡宮の聖母子像/撮影・藤井勝彦

 神功(じんぐう)皇后といえば、第14代仲哀天皇の皇后で、息子の応神天皇が即位するまで、69年(実在したとしても、実年数はその半分か?)にもわたって摂政として政を司ったとされる人物である。

 

『日本書紀』にも、皇后でありながらも、歴代天皇と同じような扱いで事績が華々しく記載されるなど、それまでの皇后とは一線を画す存在であった。実在を疑問視する向きもあるが、そんな疑念なぞ吹き飛ばすかのように、多くの記録や伝承に満ち溢れている。むしろ、確かに実在したと考えるほうが自然だろう。

 

 しかしこの御仁、伝えられる事績には荒唐無稽な話も多く、その全てを真に受けることは、とてもできそうにない。特に「三韓征伐」と称される新羅等への出兵記事は、かなり胡散臭い。

 

 たとえば、いざ出航しようとしたときのことである。記事には、わかりやすく訳すると「軍船を押し並べて渡海しようとした時、大小を問わず海にいるすべての魚が嬉々として集まって船を背負って運んでいった」とあるのだ。もちろん、あり得ることではなく、「まゆつばもの」というべき書き方だ。

 

 おまけに、神(墨江三神)までもが、金銀財宝にあふれた西の国(新羅)の征服を勧めたとするが、聖なる神が本当にそんな傲慢なことを語ったのか、これまた信じがたい。当然のことながら、仲哀天皇はこれに不審を抱いたものの、神の怒りを買って息絶えてしまったとか。

 

 一方、皇后の方は、お告げに従って新羅への侵攻を開始したとするが、その顛末に何やらキナ臭いものを感じてしまうのは、筆者だけではあるまい。

 

 仲哀天皇の死に関してもそうだが、仲哀天皇の実子であるはずの応神天皇の誕生にまで、臣下の武内宿禰が絡んでいるとの怪しげなる説まで噴出しているが、それもあり得そうだと思ってしまうほど、疑わしい話なのだ。

 

 ともあれ、本題に移ろう。この「三韓征伐」なるものが、今回注目すべきテーマである。手っ取り早くいえば、それが事実なのかどうか? だ。もちろん、前述の「すべての魚が船を背負って云々」などは論外。

 

 ここで問題にすべきは、『日本書紀』が記すような「三韓征伐」なるものが、本当に史実に即したものだったのかどうかである。

 

次のページ■「日本を恐れおののいて降伏」は本当なのか?

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過去記事

藤井勝彦ふじい かつひこ

1955年大阪生まれ。歴史紀行作家・写真家。『日本神話の迷宮』『日本神話の謎を歩く』(天夢人)、『邪馬台国』『三国志合戰事典』『図解三国志』『図解ダーティヒロイン』(新紀元社)、『神々が宿る絶景100』(宝島社)、『写真で見る三国志』『世界遺産 富士山を行く!』『世界の国ぐに ビジュアル事典』(メイツ出版)、『中国の世界遺産』(JTBパブリッシング)など、日本および中国の古代史関連等の書籍を多数出版している。

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